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ミステリの祭典

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細い線

作家 エドワード・アタイヤ
出版日1954年12月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 8点 クリスティ再読
(2018/09/15 21:17登録)
この1作だけでミステリ史に名を残した、犯罪心理小説の傑作である。ひょっとして作者が殺人を犯した実体験に基づいてる...だったとしても納得するくらいの迫真性である。地味だけども何回も何回も再刊されており、絶対に古びないタイプの「パターン発明的な」名作だとおもう。
親友の妻と不倫する主人公は、SMプレイでついやり過ぎたようで相手を絞殺してしまう。どうやらうまく警察の嫌疑を逃れたらしいが...しかし、息子の急病、同僚の使い込みといった日常の事件が、繊細な主人公の神経を痛めつける。主人公は「自らの殺人を告白したい」という想いに囚われるようになったのだ。告白された妻は自らの生活を守りたいし、妻を殺された親友だって告白に困惑するばかりだ。さて、どうなる?
という極めて型破りな小説なんだけども、微に入り細に入った心理描写が納得のリアリティを与えている。人間心理ってのはね、慣性というか変化を嫌う保守性があるから、愛する人がとんでもないことを言い出しても、向き合うことが難しいんだよ。そういう機微を存分に描いたオトナの名作。おすすめ。

No.1 7点
(2014/08/18 22:51登録)
アタイヤは、英語版Wikipediaによればレバノン人で、むしろ自伝やノンフィクションの方が重要な作品とみなされているようです。しかし邦訳はこの1冊だけ。バウチャーや乱歩の称賛もあってか、成瀬巳喜男監督の映画以外にも3回もテレビドラマ化されています。また、フランスでもシャブロル監督が1971年に映画化しています。視覚的に派手なところは一切なく、映像向きとはあまり思えないのですが。
簡単に言えば、友人の奥さんを殺してしまったピーターの罪悪感による心理葛藤を描いた犯罪心理小説で、彼が殺人現場を離れるところから話は始まります。警察の捜査は全く描かれませんし、ピーターの仕事も登場人物表ではジャーナリストとなっていますが、会社が通信社だというだけで、具体的な仕事内容は不明。ひたすら個人的な面のみで構成された作品です。タイトルの「細い線」とは心理的な境界線のことで、第3章と第9章にこの言葉は出てきます。

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