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ミステリの祭典

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死の快走船

作家 大阪圭吉
出版日2014年07月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 ボナンザ
(2020/12/27 12:44登録)
現行の三冊で読めない作品をまとめたまさに珍本集の名にふさわしいレア短編集。読んでみると戦中の社会情勢に迎合した人情ものが大半で、なぜ絶版なのかすぐに分かる内容揃いだが、貴重な資料であることに変わりはない。

No.1 6点 kanamori
(2014/08/10 15:38登録)
日下三蔵編”ミステリ珍本全集”の4巻目。戦前に出版された大阪圭吉の全5冊の短編集の中から、創元推理文庫2巻と論創社の探偵小説選の収録作を除き、単行本未収録作品8編を加えた全38編が収録されています。

編中で唯一既読だった表題作「死の快走船」は、被害者の残した言葉によるミスディレクションと、事件の隠された構図の意外性で読ませる佳作。ただ、”戦前を代表する本格探偵小説作家”という呼称に値するパズラーと言えるのはコレぐらいで、ほかの本格モノに関しては落ち穂拾い的なものとなっている。あとは、ミステリ要素があってもトリックより日常の謎風のプロット重視で、軽妙洒脱な語りとオチで読ませる作品が多かった。(某ホームズ譚のヴァリエーションといえる作品が目立つ)
また、『ほがらか夫人』収録の11編は、ほとんどが人情話モノの非ミステリで、戦時下という時局を反映して、”お国のため”とか”兵隊さんのため”という国威高揚的な話になっているのがなんとも.....。そんななかでも、「トンナイ湖畔の若者」は、樺太の村に住むアイヌの青年が見た日露戦争という割と長めの異色作で、作者の実力が覗える力作だと思う。
ほとんどの収録作がミステリとしては物足りないが、本書は出版されただけで意義があるw (よって採点に1点加算しました)。

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