街を黒く塗りつぶせ 記者バート・ハーディン |
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作家 | デイヴィッド・アリグザンダー |
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出版日 | 1965年01月 |
平均点 | 5.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | 人並由真 | |
(2021/01/07 04:59登録) (ネタバレなし) 1950年代のニューヨーク、ブロードウェイ。大衆向けの新聞「ブロードウェー・タイムズ」の編集長バート・ハーディンは、ギャンブルの借金を返すため、朝鮮戦争時代の戦友で親友のテレビスター、マイク(ミカエル)・エインズリーから、文筆仕事のバイトを紹介してもらう。バイト先の組織「ラティン・アメリカ貿易同盟」で打ち合わせを済ませて自宅に帰ったバートだが、そこにあったのは全裸のマイクの惨殺死体であった。 1954年のアメリカ作品。 バート・ハーディンもののシリーズ第二作と言われるが、書誌サイト(https://embden11.home.xs4all.nl/Engels/alexander.htm)によると本作こそがシリーズ初弾で『恐怖のブロードウェイ』の方が第二作のようである。まあどちらも1954年の刊行みたいなので、どっかで情報が混同されているのかもしれない。正確には、どちらが先であろう? それでくだんの『恐怖のブロードウェイ』は少年時代に読んだ記憶がうっすらとある評者だが、内容について思い違いをしていなければ、評価はやや微妙であった。 というのは1960年代のミステリマガジンの署名エッセイ記事で同作をけっこうホメていた文章があり、それに接して期待しながら実作を手にとってみたら、意外に早々と大ネタが見えてしまい、な~んだと思ったことがあったからである(記憶違いでなければ、そういう経緯を辿ったハズだ)。 ただまあ<デイモン・ラニアン風の猥雑な市民の場を舞台にした、都会派のB級ミステリ>という作風には今でも惹かれるものがあり、それで改めて、書庫から出てきた古いポケミスを紐解いてみた。 ミステリとしてのレビューでいえば、先行するkanamoriさんのポイントを押さえた書評に付け加えることは大してない。 正直、いくら風俗ミステリとはいえもうちょっとフーダニットの要素があるかと思いきや、ほとんどその辺の興味に応えてくれなかったのはたしかに拍子抜け。 しかしソレでつまらない作品かというと、決してそんなことはない。ニューヨーク、ブロードウェイの風俗描写の芳醇さ、登場人物たちの勢いのある動き、その辺は最高級に快い。ラニアンとかラードナーとかの持ち味をベースにした物語世界が期待通りに楽しめる。 欲深な酒場の主人が被害者マイケルのお通夜を主催して有志の参加者を集めて、その場で<お通夜の主催者への労い金>の名目で小銭をかき集めようとケチな考えを抱くが、バート・ハーディンがそんな小狡い思惑をイキにうっちゃりかえす場面など、正にラニアンの世界、という感じである。 推理小説要素~謎解きミステリ味は希薄なんだけれど、こういうのもたまにはいいよね、と思わせる風俗ミステリの佳作~秀作。 先に紹介した書誌サイトによると、ハーディン・シリーズは未訳の長編がまだ6本あるみたいなので、どっかの奇特な出版社が面白そうなものをみつくろって、もう1~2作くらい翻訳発掘してくれないかしらん。 |
No.1 | 5点 | kanamori | |
(2014/03/10 22:14登録) 競馬の借金返済のため、旧友のマイクから輸入業者を紹介され目出度く返済の目途が立ったハーディンだったが、自宅マンションに帰ってみるとマイクの虐殺死体が待っていた--------。 ブロードウェイの芸能新聞社の編集者で、賭け事とアイリッシュ・ウイスキーを愛する伊達男バート・ハーディンが、ある輸入業者の取扱った南米産の骨董品壺を巡る殺人事件に巻き込まれる、シリーズの第2作。 ギャングのボス、酒場のバーテン、ショー・ビジネスの人々など、ブロードウェイに生きる登場人物たちが、どこかデイモン・ラニアンの短編小説の人々を髣髴とさせ、魅力的に描かれているのは前作同様です。ただ、今回は謎解きの要素は希薄で、どちらかというとハードボイルドが入ったクライム・ノヴェルに近い。亡き親友マイクの妻ドロシーとハーディンとのラストのやり取りなどは、名作ハードボイルドに匹敵するような印象に残るシーンですが、現在の視点でみるとプロットが凡庸で途中で真相が割れてしまっているのが残念なところです。 |