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ミステリの祭典

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サイモン・アークの事件簿〈Ⅴ〉
サイモン・アークシリーズ

作家 エドワード・D・ホック
出版日2014年01月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 nukkam
(2024/02/16 17:29登録)
(ネタバレなしです) ホック自身が日本読者のためにセレクトした全3巻26作、そして国内編者がセレクトした全2巻16作の最後を飾る本書でサイモン・アークシリーズの事件簿(創元推理文庫版)が終了しました。サム・ホーソーン医師シリーズや怪盗ニックシリーズは全作品が読めるのに全61作書かれたサイモン・ホークシリーズは約2/3の翻訳出版に留まり、いやこれもよく集めたと評価すべきなんでしょうけどわがままな私は心残りを否定できません。本書は「闇の塔からの叫び」(1959年)から「怖がらせの鈴」(2001年)までの8作の本格派推理小説が収めれています。100ページ近くの中編「炙り殺された男の復讐」(1960年)は焼き殺されたはずの男が次々と悪意のタブレット新聞を発行するという風変わりな謎、後半には警察監視下での消失事件という謎まで追加されて読ませます。消失トリックは小手先系ながら巧さを感じさせますが、ちゃんと探せば発見できたはずなのに見つけられない警察捜査のお粗末さは気になります。焼死事件についての推理説明も十分ではありません。エジプトを舞台にした「魔術師の日」(1963年)(「サイモン・アークの事件簿Ⅰ」で読めます)から実に9年近い空白を経て発表された「シェイクスピアの直筆原稿」(1972年)は冒頭でサイモンのエジプトからの帰還が紹介されていてちゃんと続編作品になっています。巻末解説の評価通りオカルト要素が全くない作品で、謎も魅力的でなく印象に残りません。個人的に印象に残ったのは砂漠でノアの箱船のようなものを作る男とゴルフ場の爆弾殺人という異質な組み合わせの「砂漠で洪水を待つ箱船」(1984年)、シリーズ作品らしいオカルト要素が十分にあり謎解きもしっかりしている「怖がらせの鈴」です。

No.1 5点 kanamori
(2014/03/04 18:38登録)
悪魔と超常現象の探求者、オカルト探偵サイモン・アークものの第5短編集。前巻につづいて翻訳者・木村二郎氏によるセレクト集になっています。

怪奇趣向を前面に出したパズラーというのが本シリーズの特徴ながら、そういった要素が弱まっているものが散見され(なかにはアークが探偵事務所を開いているものまであり)、探偵のミステリアスさ・独自性が失われている作品が多かったのは残念なところ。他の探偵キャラクターでも違和感のない事件が多かった気がする。また、当シリーズは、サム医師ものと違って、シリーズとしての連続性が配慮されていないのも不満なところです。
個々の収録作の中で印象に残ったのは、施錠された礼拝堂内の殺人を扱い構成にも仕掛けがある「怖がらせの鈴」、前半冗長なところがあるも読みごたえ十分のフーダニットもの中編「炙り殺された男の復讐」、顔のない死体テーマにヒネリがある「海から戻ってきたミイラ」の3作品です。
まだまだ未訳作品があるも本書でサイモン・アークものは終了らしい。つぎはレオポルド警部シリーズの訳出を期待したい。

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