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ミステリの祭典

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となり町戦争

作家 三崎亜記
出版日2005年01月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 8点 虫暮部
(2022/03/10 11:32登録)
 最後にきちんと辻褄を合わせる類の話ではないけれど、“通り魔殺人” が浮いているのが気になった。但し全体としてはその “書き過ぎない” 手捌きが効いている。
 その上で、ファジィな不安感のようなものをシンプルに “戦争” と言い切った作者の強心臓の勝ちだ。“カジュアルな安部公房” なんて思ったが、これは私の読み手としての引き出しが乏しいせいであるな。

No.1 5点 メルカトル
(2014/02/19 22:23登録)
ある日突然、僕は郵便受けに入れられた町の広報で、となり町との戦争が始まることを知った。曰く「となり町との戦争のお知らせ」、開戦日は9月1日、終戦予定日は3月31日とある。
そして何日か後に、町役場総務課となり町戦争係の香西という女性から電話で、僕を戦時特別偵察業務従事者に任命する旨を知らされる。僕は香西さんと協力し、与えられた任務を全うしようとするが・・・というなんだかよく分からないストーリーである。
正直、もっとアクションシーンがふんだんに盛り込まれているファンタジー小説を想像していたのだが、その意味では肩透かしを食らった。全編を通して、戦争の生々しい惨状を描写するでもなく、なんとなく戦争を実感できないまま物語は進行していく。
むしろ、僕と香西さんの交流が主に描かれており、戦争とは一体どういうものなのかという問いかけは二次的な副題となっているようだ。
そんな中でも、ユニークな人物が何人か登場し、ユーモアも忘れてはいない。しかし、町内での通り魔殺人や、僕の会社での出来事など、色々放り込みすぎて幾分まとまりがない感じを受ける。
終始なぜ隣の町と戦争を始めなければならないのか、という疑問に苛まれての読書になるのは間違いないが、これは文庫化に際して加筆したという、別章で多少は読者に説明されている。
だが、どうにもスッキリしない読後感であるのは否定できない。

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