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ミステリの祭典

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ダーク・タワーⅡ-運命の三人-
<ダーク・タワー>シリーズ。別題『ザ・スリー 暗黒の塔Ⅱ』

作家 スティーヴン・キング
出版日1996年05月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 7点 Tetchy
(2019/05/15 23:55登録)
この物語はどこか我々の世界との共通項を持つ不思議な世界を舞台、特に西部劇に触発されただけに西部開拓時代のアメリカを彷彿とさせるファンタジー色が強かったが、本書ではなんと我々の住む現実世界へガンスリンガーは現れる。
彼の前に立ち塞がる黒衣の男ことウォルター・オディム、またの名を魔導師マーテン。この敵に立ち向かうために3人の仲間を集める。なんというベタな展開か。少年バトルマンガの王道とも云うべきプロットである。
しかしそこはキング。この仲間が非常に個性的。いや通常の物語ならば恐らくは厄介過ぎて仲間になんかしたくない、清廉潔白とは程遠い素性の人物ばかりが登場する。

ヘロイン中毒者でヤクの運び屋、両足を失くした二重人格の黒人女性、そして社会的に成功したシリアルキラー。
どう考えても旅の仲間にはふさわしくない、いや寧ろ避けたいか、敵の配下にいるような人物たちがローランドが我々現代世界から選び出すことのできる仲間なのだ。
こんなことを考えつくのがキングが凡百の作家を凌駕する、突出した才能の持ち主であることの証左であるのだが、果たしてこんなまとまりのないメンバーを伴にしてどうやってこの先長大な作品を描くのかと読んでいる最中はモヤモヤさせられた。

しかしキングはこのあり得ない仲間たちを引き入れる結末を実に鮮やかに結ぶ。

このなんとも扱いにくい輩、もとい仲間たちの引き入れ方が実に変わっている。
ガンスリンガーの旅路の途中に現れるドア。そこにはそれぞれ対象の人物を象徴する言葉が刻まれている。エディ・ディーンのドアには<囚われ人>、オデッタ・ホームズのそれには<影の女>、最後は<押し屋>と書かれたジャック・モートのそれ。
そのドアを開けるとガンスリンガーは我々の住む現実世界で対象となっている人物の意識へと入り込むことができ、さらには現実世界で手に入れたものを彼の世界へ持ち込むことが出来る。
そして意識に入り込んだ人物をドアに引き込んで現実世界から消すこともできれば、2人で同時にドアを開けて仲間と共にガンスリンガーが現実世界に姿を現すことが出来るのである。
これはかつてキングがストラウヴと共作した『タリスマン』の世界に似ている。

この現実世界の対象人物たちがガンスリンガーの仲間になっていくそれぞれのエピソードがまた実に濃い。
三者三様の毛色の異なる短編が収められたような内容はまさに自由奔放なファンタジー。どんな方向へ物語が進むのか全く予断を許さない。キングは頭の中に浮かぶ物語を思いつくままに紙面に書き落としているかのようだ。そしてそれを見事に<暗黒の塔>という大きな幹を持つ物語へと繋げる。

冒頭私はこのダークタワーシリーズを少年バトルマンガの王道のような作品だと述べた。しかし読後の今はそのコメントがいかに浅はかなものだったと気付かされた。
この何ともミスマッチな仲間が最終的に強い絆を備えた3人の仲間へと着陸する物語運びには脱帽。これがキングであり、やはり並の作家ではなく、少年バトルマンガの王道と断じようとした私の想像を遥かに超えてくれた。
そしてそれは人それぞれに生きている意味や役割があることを示しているようにも感じた。

1巻目はイントロダクションとも云うべき内容で正直このダークタワーの世界の片鱗の中の片鱗が垣間見れただけで正直展開が想像もつかなかったが、本書においてようやくその世界観や道筋が見えてきた。そうなるとやはりキングが描くダークファンタジーは実に面白い。

危うさを秘めた3人の旅はようやく始まったばかりだ。

No.1 4点 ∠渉
(2013/12/20 00:33登録)
あくまで単体としての評価。
全く物語の本筋が見えてこないままストーリィが展開していくので、第二部にしてもう少しじれったいけれども、物語が波に乗るまでが非常に長いのはもうキングのスタイルだし、それだけ細かく描きこまれているのは良いことだと思います。なのでここは壮大な伏線の章としてきっと重要なピースの一つなのだろうと思って読み進めた。
だけど、世界観としてはⅠの方がが個人的には好きだったのでこの評価。同じ作者の同じシリーズの作品読んで世界観違うって言うとおかしいけどインターバルもあってか全体に纏ってる雰囲気がなんかちがったんだよなぁ、と。でも迫力は抜群なので、ぐいぐい読まさりました。
やっと始まった感じはするけども、兎にも角にもまだまだ輪郭が見えてこない。だから早く続きを読まねばと思っちゃっている僕はもうこの物語の虜なのです。

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