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ミステリの祭典

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十二人の抹殺者
江良利久一シリーズ

作家 輪堂寺耀
出版日2013年11月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 nukkam
(2015/12/31 10:21登録)
(ネタバレなしです) 1960年発表の江良利久一シリーズの本格派推理小説で、1952年に雑誌連載されながら中絶してしまった「狼家の恐怖」を改訂完成させたものだそうです。1960年といえば本格派推理小説の人気は下降線を描き、社会派推理小説が肩で風を切っていた時代だと思いますが時代の潮流に器用に迎合することができなかったのでしょうね。殺人予告状に連続殺人事件(犠牲者の数が半端ないです)、密室に足跡のない殺人、アリバイ崩しにどんでん返しと本格派以外の何物でもない世界が広がります。トリックに見るべき物がないとか事情聴取が丁寧すぎて物語のテンポがやや重いとかなどの弱点はありますが、輪堂寺耀(りんどうじよう)(1917-1992)の代表作と評価されるのも納得の力作ではあります。しかし自分の作風が(当時の)読者が求めている物ではないことを悟ったのでしょうか、本書以降は作品を発表することはありませんでした。

No.1 6点 kanamori
(2014/01/03 13:17登録)
「謹賀死年」「死にましてお芽出たう」------同じ敷地に建つ2つの屋敷、結城家と鬼塚家の全家族12名のもとに殺人を予告する不吉な年賀状が届く。一方の家長が鍵のかかった部屋で惨殺される事件を発端に次々と両一族の者が殺されていく--------。

あの「本格ミステリ・フラッシュバック」で取り上げられた昭和のミステリ作家のなかでも、ひときわ異彩を放つ得体の知れない作家・輪堂寺耀の代表作。昨年半世紀ぶりに復刊された、日下三蔵編”ミステリ珍本全集”の2巻目で読みました。
昭和35年の発表当時でも時代錯誤と見做されたであろうコテコテの本格探偵小説です。密室殺人や雪上の足跡のない死体など、次々と連打される不可能殺人の謎は魅力的です。ただ、その謎を引っ張らず、読者が推理する暇なくその都度解き明かされ、フーダニットの興味主体で展開される構成がちょっともったいない感じを受けます。まあ、「四次元の密室」や「逆密室」という煽りが凄い割には、どの密室トリックも独創性はあまりないのですが。
事件が起こる都度、関係者に訊問を繰り返す同じパターンは単調ながら、名探偵・江良利久一(=エラリー・クイーンのもじりw)と叔父の佐藤警部らとの推理のディスカッションは意外と丁寧だと思います。
併録の「人間掛軸」も名探偵・江良利ものの探偵小説。床間に掛軸のかわりに死体を吊るす連続殺人には、見立て殺人という意味合いはなく、伏線や犯人特定のロジック面も弱いものの、怪奇趣向の冒険スリラーとして面白い、こちらも怪作でした。

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