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ミステリの祭典

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殺人者の湿地

作家 アンドリュウ・ガーヴ
出版日2013年09月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 8点 クリスティ再読
(2024/12/11 18:09登録)
わお!これは凄い。よくもまあこんな作品が長らく訳されてこなかったものだ。評者のガーヴ最終作で、こんなオタカラとブチ当たるとは思ってなかったよ。

評者未読の某日本作品とも同じネタ、とあとがきにもあるが、先日評者が書評した松本清張の某作とも、実は同じネタだったりするんだよ。振り返ればガーヴは1908年生まれ、清張は1909年生まれ。完璧に同世代の上に、ガーヴだって「社会派」と呼ばれる作品がいくつもあるし、ポリティカルスリラーもあれば、犯罪小説とパズラーを合体させたタイプの作品は両方とも得意技だ。いや、ガーヴってイギリスの松本清張かもしれないぞ!

なおかつ、本作だと全体的な構図がとってもアイロニカルなもので、評者なんて大喜び!
攻防感のある「倒叙」かつ、視点を変えることで伏せた「意外な真相」。それこそコロンボ見て犯人を応援するような感情を、久々に味わった(苦笑)
いや犯人サイコパスで悪い奴ヨ....

ガーヴって「ウェルメイド」にこだわった、評者に言わせれば「理想的な大衆作家」なんだけども、その根底にはしっかりとした「ミステリの素養」が潜んでいて、時折王道ミステリで勝負してくれる作家だと思う。今回本作で翻訳済みのガーヴの長編は全作書評できたことになるけど、実に楽しかった! 敬意をこめてベスト5〈順不同)。
「地下洞」「メグストン計画」「ギャラウェイ事件」「遠い砂」「殺人者の湿地」
けど、ガーヴって特にいうほど駄作がないのも凄い。しいて言えば「D13峰登頂」くらい?

No.1 7点 kanamori
(2013/12/20 18:43登録)
富豪の娘との資産めあての結婚を目前にしたアラン・ハントだったが、ノルウェー旅行中に遊びで情事を楽しんだ純真な娘グウェンダが目の前に現れ妊娠を告げられる。窮地のアランは家の周辺に広がる湿地帯に目をつけ、ある計画を実行するが-------。

比較的翻訳状況に恵まれ60年代にポケミスから次々と邦訳作品が出ていたガーヴの、なんと42年ぶりの翻訳作品。なぜこれがいままで未訳だったのか不思議に思えるレベルの秀作だった。
冒頭は倒叙形式で語られるが、犯行場面の描写の直前で第1部が終わる。第2部に入り、捜査側の視点で語られるグウェンダ失踪に対するアランのアリバイなど、事件が雲をつかむような展開になるところが最大の読みどころ。二人の刑事による推理のディスカッションはコリン・デクスターの初期作を思わせる。またメインの仕掛けの部分が単純ながら意表を突くトリックで(解説の”国内の超有名作を想起させる”は慧眼)これは本格派志向の読者にも受け入れられるのではと思う。

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