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ミステリの祭典

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腐葉土
木部美智子シリーズ

作家 望月諒子
出版日2013年04月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 虫暮部
(2023/04/01 14:20登録)
 基本的にはとても面白かった。様々な正義が絡み合って依拠したり反発したりするさまが有機物っぽいニオイを発する力作。“長過ぎでは?” と思いつつ読んでいたら意外なところがミステリ要素につながったりして、濃度が高く必然的な長さであると納得。

 ただ、最終章で真相①犯人は誰でその動機はこうだ、と言うところがミステリとしての頂点。ここでせっかく驚いたのに真相②実は主導者は別にいて本当の動機は云々、と畳み掛けるのはどうも戦略ミスに思える。①より②の方が衝撃度が低いんだもの。ソフトに引き戻してどうする。
 私だったら、まず②で或る種の感動を誘った後に①が来て “結局、カネかッ?” と落とす方がいいな。
 それに、②に関してはこれといった証拠が無い(よね?)。自供内容に頼るのみである。つまり情状酌量狙いの犯人が舌先三寸で切り抜けた、のかも。作者の意図はどうあれ、リドル・ストーリーとして成立してしまっている。

 粗探しをもう一つ:やはり最終章。“睡眠薬の濃度を上げる為に酒の量を減らした” との説明には首を傾げてしまう。薬の量を増やせば済むじゃないか。酒が少ないと盗み飲みしづらい。
 作者は、何らかの齟齬を生じさせておかないと手掛かりが少な過ぎる、と思ったんじゃないかな~。でもこれは悪手だな~。

No.1 7点 makomako
(2013/09/13 13:16登録)
 かなり重い話でした。とんでもない人間、普通の人間、正義と善意の人間たちがくりひろげる話は非常に複雑に絡み合い最後にはどんでん返しもあって読み応えは十分です。
 文章に強い情熱が感じられるます。ただしそれが余ってかなりくどい。残酷冷酷なシーンはこの話には必須なのですが、これほどくどく語られるとここで嫌になってしまいそう。
 幸いというか海外旅行中飛行機の中で読んだので投げ出さずに読み通しました。
 読後感も悪くないし力作であることは間違いがないのです。もうちょっとさらりと書いて長さも三分の二ぐらいに納めたらもっと良い評価が得られそうです。

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