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ミステリの祭典

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雪の炎

作家 新田次郎
出版日1973年01月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点
(2013/09/10 09:56登録)
山岳小説の大家が書いた数少ない山岳長編ミステリー。
5人からなる登山パーティーのリーダー・華村敏夫は、なぜ一人だけ遭難死したのか。その謎を妹の名菜枝が探る。

序盤の遭難場面は迫力がある。その後は、名菜枝が探偵役となって、身内としての感情をまじえながら当事者たちを対象に聞き込みをする。
ラストでは山で裁判が行われる。

聞き込み場面では前半、当事者たちが名菜枝から見てみな怪しく、油断ならない人物のように描かれている。主人公がこれほど猜疑心を持って人に接するのには、ちょっと奇異な感じがした。被害者の身内なのだから、ある意味、自然な描き方ともいえるのだが。と、疑問を抱きながら読み進んでいくと、後半になってその人たちの人物像に変化が見られてきて、俄然楽しくなる。そのへんに構成の巧みさを感じた。

中途では、企業物の様相も呈してきて、狭義の社会派ミステリーという印象を受けたが、最終的には、動機や真相を主たる謎とした広義の社会派ミステリーといった感じがして、個人的には好ましく思えた。まあ、きわめて俗っぽく、2時間サスペンスになりやすい内容でもあるのだが。
人物描写や最後の詰めの部分にはひっかかる点もあり、推理小説として完成度は高いとはいえないが、そんなマイナス点が気にかからない何かがあり、ミステリー風人間ドラマにおおいに満足した。

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