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ミステリの祭典

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奇術探偵 曾我佳城全集 戯の巻

作家 泡坂妻夫
出版日2003年06月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 ボナンザ
(2017/06/20 20:55登録)
後編ということでこちらも玉石混淆な短編集。
こちらは所々に最後の物語につながる、彼女の危うさが見受けられるのも興味深いですね。
超越しているようで人間くさい魅力的なヒロインだと思う。

No.1 7点 E-BANKER
(2013/09/08 13:56登録)
先般書評した「秘の巻」に続き、今回は「曾我佳城全集」の後編に当たる本作について。
「秘の巻」でも触れたが、文庫版をこよなく愛する読者としては、せっかくの二分冊だし分量も多いので、分けて書評してみたい。
前半8編は「小説現代」誌、後半3編は「メフィスト」誌に掲載されたもの。

①「ミダス王の奇跡」=初っ端から実にオリジナリティに溢れる一編。「雪密室」といえば、手に垢がつきまくったようなプロットだが、こんな奇っ怪なトリックは初めて・・・。こんな姿で登場する佳城にも驚かされる。
②「天井のトランプ」=なぜか天井にトランプのカードが一枚貼られている。決して人の手の届かないところに・・・。こんな風変わりな「流行」を追ううちに事件に巻き込まれる男。そしてなぜか今回も登場する佳城・・・。まさに神出鬼没。
③「石になった人形」=本編のテーマは腹話術。腹話術といえば「人形」が思い浮かぶが・・・本編はココに重大な秘密が隠されている。
④「白いハンカチーフ」=なんだか大昔の歌謡曲を思い起こさせるタイトルだが・・・。本作はテレビのワイドショーに出演した佳城が、番組で採り上げられた事件の解決をその場でやってしまうという設定。まぁサプライズ感はある。
⑤「浮気な鍵」=これは「密室」を扱った一編なのだが、作者らしい風変わりな密室。そして、登場人物たちの妙な「性癖」も作者らしいのかも・・・
⑥「シンブルの味」=本編の舞台は日本を飛び出し、アメリカはシアトル。トリックそのものはありきたりのものなのだが、作者らしいひと捻りが効いている。
⑦「とらんぷの歌」=奇術師がお客さんの無作為に引いたトランプを当てるというマジック。これはありきたりのマジックだが、すべてのトランプの数字を上から順番に当てるというマジック・・・これにはこういうタネがあった。
⑧「だるまさんがころした」=「ダルマ」という名を持つ奇術師に纏わる一編。正直、オチはよく分からず。
⑨「百魔術」=「百物語」といえば、百の怪談を行う集まりのことだが、「百魔術」とは文字どおり百の奇術(魔術)を行う集まり・・・というわけで、その場で殺人事件が発生してしまう。
⑩「おしゃべり鏡」=「鏡」といえば、マジックには欠かせない小道具だが・・・
⑪「魔術城落成」=佳城が10年以上の歳月をかけ建築してきた「魔術城」。ついにその城が完成する日が近づく。親しい仲間うちを招いての内覧会の最中、殺人事件が発生してしまう・・・。そしてラストは「曾我佳城全集」のオーラスに相応しいもの。余韻残るよなぁー

以上11編。
「秘の巻」もそうだが、奇術とミステリーってここまで相似形なんだと認識させてくれる。
全編に何らかの奇術ネタが埋め込まれていて、もうこれは名人芸という域だろう。

ただ、後半に行くほど徐々にクオリティが落ちてきている感はある。そこがちょっと残念。
(①がベストかな。②⑤あたりも良い。⑪は別格。)

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