マイアミ沖殺人事件 捜査ファイル・ミステリー/シュワッブ警部補 |
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作家 | デニス・ホイートリー |
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出版日 | 1982年10月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 5点 | nukkam | |
(2016/08/03 05:34登録) (ネタバレなしです) 「世界最初の袋綴じ本」と紹介している文献もある1936年発表の本書はジョー・リンクス原案、デニス・ホイートリー著という共著である旨が記載されています。リンクスについてはよく知りませんがデニス・ホイートリー(1897-1977)は映画にもなった「黒魔団」(1934年)などのオカルト小説を書いたことで有名な英国作家です。写真や実物の証拠品(カーテンの切れ端や髪の毛など)が添付され、事情聴取の記録や刑事からの報告書を読んで犯人を当てようという捜査ファイルシリーズ第1作です。私の読んだ中央公論社の大判は文章ページは100ページ少々で後は証拠が添付されたページ、そして解決編は袋とじになっています。小説というよりゲームブックに近く、物語としての感想は書きようがありません。となるとパズルとしての出来栄えで評価するしかないのですが添付された証拠品をちゃんと推理の論拠にしている点は素晴らしいです。だけどシュワッブ警部補の4つの推理(特に1番目と2番目)をあの証拠品から見抜くのは相当難しいと思います。読者に本物の捜査に参加する気分を味わせようというこの企画、本格派黄金時代ならではですね。特殊なタイプの本のため価格は2800円と当時(国内では1982年発売)としては結構高額でかなりの推理マニア向けといえそうです。 |
No.2 | 7点 | クリスティ再読 | |
(2016/02/23 23:02登録) 黒魔団のついでに図書館で本作を借りて読んだ。昔出てたのは知ってたけど、高いんで手がでなかったんだよ。当時2800円だから今で言えば4000円くらいになるだろうか。 何でこんなに高い本なのか、というといわゆる「捜査ファイル」の体裁をとったパズラーで、手紙とか電報とか、果ては血のついたカーテンの切れ端、髪の毛、紙マッチなんかが封入されてついてくる(写真も多数)特殊造本だからなんだよね。 で、こういう写真とか実物とかを見ていると、アメリカン・リアリズムとでも言うべき即物的なリアルさに何か感動してしまうのである。たとえば警察無線を傍受して殺人現場にいち早く駆けつけて写真を撮って売っていたウィージーって写真家がいたけど、そういう視線のあり方がいわゆる「ハードボイルド」の根底にあるわけで、そういう見方で言うと本作はパズラーなんだけども実は「ハードボイルド」の即物性をこれほど体現した作品はない、と見てもいいのかもしれないね。 パズラーとしては、そういう1930年代アメリカの写真の解読力を要求されてしまうので、今どきの日本人には正解は難しいと思う。パズラーとしてはもう成立しないことを含めて、無味乾燥なパズラーではなく今はもう存在しない世界の垣間見る、非常に有益な体験ができたように評者は思うのだ。 |
No.1 | 6点 | mini | |
(2013/08/30 09:55登録) 先日24日発売の早川ミステリマガジン10月号の特集は、”ミステリ・ゲーマーへの道” 私はPCゲーム自体を殆どしないのでミステリ・ゲームも滅多にしない、そもそも推理パズル本の類にも全く興味が無い読者である したがってミステリ・ゲーマーじゃないから便乗企画のしようがない、と思ったらこれを思い出した 1930年代は黄金時代の通称通りでミステリーの爛熟期であった 爛熟期の常としてキワモノ系や変種が登場するものである そんな中やはり登場したのが、捜査過程の現状写真・証拠物件の写真・関係者の身元調査などの捜査資料文書、といったものを添付させた通称”捜査ファイル・ミステリー”である これは読者に臨場感を与えあたかも捜査陣の一員になったかのような気分にさせる効果が有る あのP・クエンティンにも作例が有るのだが、クェンティンって本当に流行に敏感と言うかミスターアメリカンミステリーだよな クェンティンのもどこかの出版社が紹介してくれるといいのだが、あっその時は証拠写真などオリジナルの雰囲気をちゃんと再現したものにしてね、中途半端は駄目だよ さてこの分野で現状日本で読めるものと言えば英国作家デニス・ホイートリーの捜査ファイルシリーズ全4冊である その内唯一文庫化され最も知られているのが「マイアミ沖殺人事件」であろう 原案者は他に居るのでホイートリーは小説部分だけを執筆担当したのかも知れない 解決編が袋綴じになっていて、私は古本屋でほぼ未使用品と袋綴じが破られていたものの両方を見付け入手しておいた、保存用と読書用である 最初からゲーム性の強いパズルとして創られているので物語性は薄いが、参考資料として容疑たちの身元照会文書などにはドラマ性が有り案外と無味乾燥ではない むしろ犯人当てパズル性にしか興味が無い読者には、全体の8割以上を占める尋問シーンの連続に冗長さを感じるかも知れない 私はパズルだけを求める読者じゃないから期待してなかった割には面白かった 文章が横書きでページのめくり方がいつもと逆なのも新鮮だった 惜しむらくは肝心の手掛りが写っている写真が小さ過ぎて、これじゃ推理出来る読者は殆ど居ないんじゃないかな シリーズで文庫化されたのはこれ1冊、他の3冊はもっと大きな版型のまま文庫化されなかったのも当然と思った、ある程度図版が大きくないと肉眼では判別し難いんだよね |