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ミステリの祭典

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フィリップ・マーロウの娘

作家 喜多嶋隆
出版日1990年03月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2019/05/23 04:02登録)
(ネタバレなし)
 場所はハワイ。「あたし」こと21歳の日本人・鹿野沢ケイは3年前に母国で問題を起こし、親の指示でハワイに追放同然の身になった。現在はパシフィック語学学校に学生として一応の籍を置きながら、観光客相手にマリファナを売って生活費を稼いでいる。そんなケイはホノルル市警の囮捜査で摘発され、ハワイ在留の日本人関係の事件を扱うセクション「日本人対策特捜蚊」のアンダー・カヴァー(秘密捜査官)になることを条件に釈放された。最初にハワイ市警が押しつけてきた案件は、数日前から行方不明になっている日本の大手企業の令嬢・五島広美の捜索。奇しくも広美はケイの友人のひとりであった。ケイは警察の情報と自分で得た手がかりをもとに、広美の行方を追うが……。

 文庫書下ろし作品。喜多嶋作品は初めて読むが、思った以上に、あるいは思っていた通りにそれなり以上に楽しめた。いかにも80年代後半(本の刊行は90年だが)の青年向けフィクションっぽい、独特なドライ感が妙に心地よい(サバサバしたくせに饒舌な文章がなんか居心地良い)。まあリアルタイムで読んでいたらどうだったかな、とか余計なことはあんまり考えないが(当時そのときは、やっぱり自分なりに好き勝手なことをしていた自覚はあるので)。

 謎解き作品としてはそんなに捻った部分はないものの、キャラクターミステリ(国産青春ハードボイルド)としては充分に味がある。読者に背を向けるわけでも馴れ合う訳でもない、主人公ヒロインの造形はなかなか魅力的だ。
 結局シリーズ化はされなかったのかな。続編がもしあれば、いつか読んでみたい。

No.1 5点
(2013/06/24 13:02登録)
ハワイに留学中の鹿野沢ケイは、危ないバイトで警察に捕らえられ、アンダー・カヴァー(秘密捜査員)となって、友人でもある失踪人を捜索することとなる。ケイは女ながらも腕っ節が強い。
裏表紙にはハードボイルド・タッチの青春ミステリーとある。ハードボイルドの定義は広狭色々あるので、どれかには当てはまるのだが、でも本作をハードボイルドとは呼びたくないなぁ。青春ミステリーと呼ぶのには哀切感がなさすぎるしなぁ。まあ「アクション活劇」ぐらいかな。

(ちょっとネタバレっぽい)ストーリーはスピード感があり、意外に楽しめてしまった。読み飛ばせることは評価できる。ラストは二時間ドラマ好きなら小学生でも予想できるレベル。もしアノ人物がラストに絡まないとしたら、そのほうが意外性があって面白いかも?

片岡義男の作風を想像していたが、ちょっと違う。倦怠感がなく、あかるく、もっともっと俗っぽいのだ。ホイチョイプロの「見栄講座」に出てくるようなアイテムが登場するかとも予想していたが、それとも少し違っていた。
バブル時代の遺産という印象が強い。物語の中にバブルを思わせる事象が描いてあるし、作風自体にもそんな時代性を感じる。
記憶のない積読本だった。1992年3月刊とあった。

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