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ミステリの祭典

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ラバー・バンド
ネロ・ウルフ

作家 レックス・スタウト
出版日1961年01月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2020/10/30 14:40登録)
(ネタバレなし)
 19世紀末。ネヴァダ州の鉱山町シルバーシティ。そこではメンタル的に弾力のあるタフガイ<「ゴム」のコールマン>をリーダーとする若き鉱山師たちが徒党を組み「輪ゴム団」を名乗っていた。だがある日、団のメンバー、ジョージ・ローリーがトラブルを起こし、仲間たちは、もう少しで縛り首にされかけた彼の逃走を補助する。ジョージは、実は今の自分の名は偽名で、本当の出自は英国の名門貴族だと告白。いずれ爵位と財産を継承した暁には、仲間たちに大枚の謝礼を支払うと約束して去った。やがて時は流れて1930年前後のニューヨーク。団員のひとりギルバート・フォックスの遺児である美人クララは、父の遺言を足がかりに当時の輪ゴム団のメンバーおよびその家族を召集。現在、アメリカに国賓の英国貴族クリヴァース侯爵として来訪中のジョージに、かつての謝礼の請求を試みる。だがそんな彼女は、勤務先の大手物産会社で窃盗の容疑をかけられていた。それぞれの案件に別口の流れから関わり合うネロ・ウルフ一家だが、間もなく殺人事件まで発生して。

 1936年のアメリカ作品。ネロ・ウルフシリーズの長編、第三弾。
 寝床の周囲の本の山をかき回していたら、新訳のHM文庫版が出てきた。そこでタブレットで本サイトのレビューを拝見するとnukkamさんの本作評、雪さんの『毒蛇』評で、それぞれこの作品に好意的。先日読んだシリーズ第二弾『腰ぬけ連盟』はややキツかったが、これは楽しめるかと期待を込めてページをめくり始めてみる。
 
 それでほぼ一日で読み終えての感想。メインゲストのクララを軸にして、二つの無関係っぽい事件がからんでいく話の流れは思ったほどややこしくならない。というかハイテンポでぐいぐい読ませる。おなじみのクレイマー警部をはじめとしてNY市警の刑事たちがかなりの数、捜査に動員されるが、これは国賓でもあるクリヴァース侯爵への対応も込めてのこと。大物がらみの事件の描写、演出としては理に叶っている。
(しかし、デキる美人OLとして当初は登場したはずのクララが段々と、ぽんこつヒロインとしての馬脚を現していく流れは実に笑わせる。少女アニメ「プリキュア」シリーズでの毎回のお約束ヒロイン描写みたいだ。)
 
 謎解き作品としてはある大きなカードが卓上でずっと裏側に伏せられていて、それがいつ表を向くかがポイント。まあその辺りは、ちょっとミステリを読みなれた人なら大方意識するだろう。もしかしたら、nukkamさんが「シリーズ入門編」とおっしゃっているのは、そのあたりのことだろうか?
 後半、事態の流れの急転に際して冷静にかつ合理的に対応するウルフの柔軟さも、なかなか頼もしい。

 失点が少なく、細かい得点が多いという意味で、これまで読んだ長編ウルフものの中では一番面白かったかも。もうちょっと何かひとつふたつお気に入りの場面とかミステリ的なギミックとかあれば、文句なしにもう1点いくんだけれど。まあかなり7点に近い6点ということで。

No.1 6点 nukkam
(2015/06/28 20:42登録)
(ネタバレなしです) 1936年に発表されたネロ・ウルフシリーズ3作目の本書は謎解きとしてはやや容易過ぎの感もあるけれど伏線がしっかり張ってあり、シリーズ入門編として最適の本格派推理小説だと思います。全く関係なさそうな2つの依頼から物語が始まりますがプロットがいたずらに複雑になることもなく読みやすいですし、最後のまとめかたも上手いです。

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