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ミステリの祭典

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万引女の靴
ペリイ・メイスン

作家 E・S・ガードナー
出版日1956年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 弾十六
(2018/11/15 06:23登録)
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第13話。1938年9月出版。HPBで読了。
雨宿りしたデパートのレストランで食事をとる二人。メイスンの夢は動く鉄道模型の大きなジオラマセットを事務所に置くこと、助手ジャクスンはゲジゲジ眉毛で子供時代がなかったような感じの男、デラは今112ポンドで109ポンドが理想、などの他愛のない会話から物語の幕が開きます。
誰でも知っている有名弁護士メイスンというのが第2シーズンの設定。メイスンが賭博場のバーで注文したのはオールド・ファッション。ちょい役でシナハラ・イツモという名の日本人コックが顔を出します。
メイスンの無茶は控え目ですが、今回はドレイクが巻き込まれて災難を受けます。地方検事が証人を入念にコーチする場面が興味深い。ホルコムは「捜査課」(homicide squad)在籍10年と証言、いつもの活躍が見られます。法廷でメイスンが最終弁論を行い、陪審の評決が出るのは珍しい。
いつもの込み入った筋でスピーディな冒険物語が楽しめますが、突飛な習慣の叔父さん(計画的な突発性泥酔及び賭博症って…)が変テコで、周りの人物の行動も不自然な感じ、解決もちょっとスッキリしません。
さてトリヴィアです。
デパートでの37ドル83セントの買い物、現在価値は930ドル程度(食パン換算)。
11章の引用「自分の仕掛けた爆発物に吹っ飛ばされた技師を見るのは楽しい」(For 'tis sport to see the engineer, hoist by his own petard. )はハムレットからの有名句。
銃は38口径拳銃が2丁登場。いずれもリヴォルヴァですがメーカー型式不明。銃関係の翻訳は難あり。
p149「いわゆる練習用拳銃」(what they call a service revolver) 練習用ではなく、「官給品の拳銃=軍用拳銃」のこと。「女性には反動が強い、重すぎる」とあるのでM1917(45口径、Colt製・S&W製の二種類あり)だと思われます。
p229「38口径弾といわれる弾丸」(女性に手頃な弾)と訳されているのは原文では「38ショート弾」(a shell known generally as a thirty-eight short) 特に断りなく「38口径弾」といえば、普通は38スペシャル弾(1899年開発、正式名称.38 Smith&Wesson Special)を指します。38 shortは正確には38 Short Colt弾(1874)で「38口径」ファミリーの元祖的な存在。38 S&W弾(1876)[稀に38 S&W short弾と呼ばれる]とは別物。いずれも38スペシャルと比較すれば弱い弾。38スペシャルが撃てる銃なら38ショートも撃てます。なおモロ族との戦闘でストッピングパワー不足が指摘された「38口径」は38 Long Colt弾(1874)のこと…

<大事なところで誤訳>
p254 それは拳銃で撃たれて死んでいたある人物なのです。(That was someone who was a dead shot with a revolver): dead shot=marksman リヴォルヴァを持った射撃の名手、という意味ですね… (これは訳文の前後から明白に変だと気づきましたが、もしかしたら他にも結構誤訳あり?)

No.1 5点 nukkam
(2016/01/06 12:29登録)
(ネタバレなしです) 1938年発表のペリイ・メイスンシリーズ第16作です。1930年代の作品に力作の多いガードナーですが、本書も一癖も二癖もありそうな人物がずらりと登場する上にプロットが予想外の展開を見せて読ませどころ満載です。メイスンに敵意むき出しのホルコム部長刑事の駄目っぷりも効果的です。しかしハッピーエンド狙いのためか強引で魅力に乏しい真相になってしまい、検察だけでなく読者まではぐらかされた感が残るのが惜しいです。あと物語とは関係ありませんが、序盤で秘書のデラの体重を暴露してますけどいいのかなあ。

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