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ミステリの祭典

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彼女の血が溶けてゆく
桑原銀次郎

作家 浦賀和宏
出版日2013年03月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 6点 tider-tiger
(2021/02/10 15:41登録)
~内科医の聡美は溶血性貧血に苦しむ若い女性患者の治療に苦慮していた。彼女は最終手段として患者の脾臓摘出を選択する。手術は功を奏したかに見えたが、のちに患者は死亡。医療過誤ではないかとメディアに糾弾され聡美は窮地に陥る。
ライター桑原銀次郎は元妻である聡美を救いつつ、スクープ記事をものにしようと動きはじめた。~

桑原銀次郎シリーズの第一作。浦賀作品の中では読みやすい部類ではないかと思う。医療ミステリとして幕を開け、二転三転ありつつの比較的まっとうな展開は浦賀ファンではなくとも充分以上に魅力的であろう。終盤にはやっぱり浦賀だなとなって、ファンも納得の一冊。後半は少々くどい部分がみられる。特にラストはもっとスッキリまとめて欲しかった。そうはいっても自分は本作のラストは好きだ。
タイトルもいい。響きがよくて意味深い。浦賀作品の中でもっとも好きなタイトルの一つ。
気になったのは主人公の思い込みが強すぎること。まあこれはもしかすると作者の狙いだったのかもしれない。もう一点は作者の認知症に対する理解が少々浅いのではないかということ。印象深いキャラではあったが、あれはちょっとどうなのかと。

完成度と感情移入、この二点を求める人に浦賀はあまり適していないと思う。ある種のもどかしさ、居心地の悪さ、漏らしそうになって駆け込んだ公衆トイレのペーパーホルダーに紙やすりが仕込まれていたときの衝撃、そういうのが好きな人にはお薦めしたい。
浦賀は読者の感情移入を期待しない。それどころか時に拒絶する。読者をわざとイラつかせているような節もみられる。ゆえに自由度が高い作品を繰り出すことができる。これは浦賀の強みでもあり弱みでもあると思う。

浦賀は『脳』に憑りつかれた作家のように思える。『脳』に縛られた作家ともいえるかもしれない。理知的な作風はそのことも関係しているのかもしれない。浦賀の世界では『血』も非常に重要なモチーフである。
浦賀の死因が脳出血だったことは必然のようにすら思えてしまう。
浦賀の脳は頭蓋骨という牢獄から自由になりたかったのかもしれない。
そろそろ浦賀が亡くなってから一年が経つが、どこかに浦賀のそれが存在しているような気がしてしまう。
こういうとりとめもない私の想念は脳が生み出す虚構に過ぎないのだろうと思いつつも。

No.2 7点 kowai
(2014/05/05 17:24登録)
シリーズ化になるとは思いませんでしたが、ラストの意外性はよかったかと。でも、続編でのキャラ設定をみてもわかりますが、他作品のような暗黒面が足りませんね。。。惜しい。

No.1 6点 虫暮部
(2013/11/01 11:10登録)
面白かったけれど、ところどころに少しくどい部分があった気がする。もうちょっと短くスピーディにまとめてくれれば、謳い文句通りにノンストップだったのだが。

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