妖女ドレッテ |
---|
作家 | ワルター・ハーリヒ |
---|---|
出版日 | 1959年01月 |
平均点 | 5.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | 人並由真 | |
(2020/04/22 03:34登録) (ネタバレなし) 第一次世界大戦を経て国土が疲弊した時代のドイツ。シュワンテミール地方の貧乏荘主ブランケンホルンが、自宅の密室内で射殺死体で見つかる。自殺の可能性もとりざたされるが、それにしては不審な状況でもあった。それから少しして、ブランケンホルンの荘園の元管理人で、今はベルリンで馬丁兼乗馬コーチとして働くロルフ・シュテーゲンは、ブランケンホルンの若い後妻で現在は美しい未亡人となったドレッテと再会。そのドレッテは、富豪のアーベルクロンと再婚の噂が囁かれていたが。 「世界推理小説全集」版の巻末の中島河太郎の解説を読んでも、正確な刊行年は不明(マジメに調べればわかりそうだが)。いずれにしろ第一次世界大戦直後にドイツに本格的なミステリブームが到来し、あの『ドクトル・マブゼ』なんかが大ヒットした熱気のなかで書かれた作品。 経済的にもドイツ国土が乱れている世相を背景に、ファム・ファタール風味のノワールロマンス的な匂いを感じさせる作り(ただしメインヒロインはドレッテばかりでなく、彼女の継子の次女ザビーネなどにも相応のウェイトは置かれる)。 密室殺人のトリックやそれに関わるロジックなどに際して、その部分で剛球・直球の勝負するような作りでは決してないが、それでも一応は、不可能犯罪の興味を刺激する作劇ではある。とはいえ作者は早めにその密室のネタを割り、その後に改めてフーダニットの要素で、読み手の関心を煽ってくる。 もちろんガチガチのパズラーではないのだが、一応はある種の伏線も張ってあり、犯人の設定はそれなりの意外性があって楽しめた。 まあ結局は、本格派パズラーというより、賞味部分の幅広い準パズラー作品という感触なのだが。 ちなみにこの作品、完訳版はくだんの創元社の「世界推理小説全集」版しかないハズだけど、その「世界推理小説全集」の収録巻はジョン・バカンの『三十九の階段(創元文庫版では『三十九階段』の書名)』と合本であった。 背表紙(箱も本そのものも)には『妖女ドレッテ』のタイトルとワルター・ハーリッヒの著者名しか書いてないから、長い間この事実に気づかなかった。だから『ドレッテ』そのものは、小説の紙幅としてすごく薄い。短い長編、あるいは長めの中編作品という感じである。 |
No.1 | 5点 | kanamori | |
(2013/03/14 12:07登録) 冷酷な荘園主の後妻ドレッテを慕う使用人ロルフ。主人の殺害計画を立てるが、何者かがその計画どうりに密室状況の書斎で荘園主を射殺しロルフとドレッテが疑われる、といった話です。 戦前にドイツで発表された本格ミステリというのが珍しいです。 ただ、あらすじ紹介を読むとガチ本格ですが、密室の仕掛けは(早々に解明されメインの謎ではないとはいえ)残念レベルのトリックで、物語も通俗的で犯罪心理小説風な展開と共に時代性を感じてしまいます。 序盤の敗戦国ドイツの退廃的な雰囲気・描写はいいと思うが、ドレッテの人物造形がいまいち伝わってこない。 |