home

ミステリの祭典

login
僕と『彼女』の首なし死体
白石かおるシリーズ

作家 白石かおる
出版日2009年05月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 名探偵ジャパン
(2019/05/09 22:21登録)
痛たたっ!
本作は、私がこれまで読んできた中で最も「イタい」ミステリでした。
文庫版の解説にもありましたが、本作に対する評価は、(作者と同名である)主人公を好きになれるかどうか、その一点に集約されていると言っていいでしょう。私は好きになれませんでした。
主人公が生首を人目に付く場所に放置するという行動のホワイダニットは、なかなか情緒的な理由によるもので、なるほどと思いましたが、その目的を達するためならば、「いや、もっと合法的なやり方があるだろ」と突っ込まざるを得ません。こんなに恐ろしいことをやってのけても、以降普通に社会生活を送っている主人公は、サイコなのだろうと思います。しかも最後、主人公は自分のやったことを全て真犯人におっかぶせて、何の罪にも問われず無罪放免になります。
序盤を読んで、「あ、こいつ(主人公)のことは好きになれないな」と感じた方は、そこで読むのをやめたほうが精神衛生上よいかと思います(笑)

No.1 6点 メルカトル
(2014/09/08 21:50登録)
愚かなことに、最近まで私はこの作品の存在を知らなかった。だが知ってしまったからには、そしてそのタイトルを目にしたからには読まない選択肢はなくなった。
本作は第二十九回横溝正史賞優秀賞受賞作である。意外なことに、選考委員の中で最も評価が高かったのは北村薫氏だったそうだ。読んでみれば分かるが、この作風やストーリーから氏の称賛を受けるとは考えにくいのである。私は少しだけ北村氏を見直した、と同時にちょっぴり好きになった。
物語は「ぼく」こと白石かおるが女性の生首を、ハチ公の銅像の前にひっそりと置き去るところから始まる。実にセンセーショナルな出だしで、その後の展開を期待させるが、全くミステリらしいところはなく、「ぼく」の会社での活躍ぶりや人間関係が乾いた筆致で描かれるばかりである。これは果たしてミステリなのか、という疑問が頭をよぎる頃、ようやくらしさを発揮し始める。
「ぼく」は実に冷静で物に動じない、浮世離れした人間性を持っており、そこに違和感や嫌悪感を覚える人は読まないほうが賢明だ。逆にそれが許容できるのであれば、一度読んでみるのも面白いと思う。
取り敢えず、終始一貫して興味の的はなぜ彼は冒頭のような異様な行為を行ったかというホワイダニットである。それは、あっと驚くような理由ではなく、うーむと思わず唸ってしまうようなものであり、それだけに余計に腹に響く感がある。
いずれにしても、本作は他のどの作品にも全く似ていない、独自のオリジナリティを持った作品と言えそうだ。少なくとも、私の乏しい読書経験からは本作を彷彿とさせるようなものは見当たらないと言ってよいだろう。なかなか面白い作家となりそうな予感もする。

2レコード表示中です 書評