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ミステリの祭典

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少女は黄昏に住む マコトとコトノの事件簿

作家 山田彩人
出版日2013年03月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 虫暮部
(2024/04/25 11:45登録)
 ミステリ的なポイントは充実している。後出しとはいえ犯人の動機や心情が相応に設定されている気配りも良いと思う。
 一方、演出のせいでやや小粒に見えてしまった嫌いがある。マコトとコトノのやりとりも、頭の中で自分なりにちょっと変換すれば楽しめるが、本当は変換無しで直撃して欲しいよね。ユーモアの匙加減は難しい。作者は恥をかくのを躊躇している、と感じた。

No.1 6点 人並由真
(2018/11/05 17:00登録)
(ネタバレなし)
 童顔で高校生に間違えられる25歳の刑事・姫川誠。彼は難事件を名推理で解決することから上司の女性刑事・桃井香住などから「名探偵マコちゃん」の愛称を授かっていた。だが人々は知らない。実際の名探偵は誠本人ではなく、彼の師であり親代わりだった今は引退した刑事・綾川伸吾の一人娘、引きこもりで性格最悪のオタク美少女・琴乃だということを……。

 先日、Twitterでのさる噂に接し、それによると香港映画界で活躍中の脚本家フェリックス・チョンが、日本のミステリが好きで、特にご贔屓の作家は横溝、清張、それに「ヤマダ」と申したそうな。インタビュアーは詳細を追いかけるのはスルーしたのだが、そのヤマダが風太郎なのか正紀かが気になる、まさか悠介じゃあるまいな、とは、この件をTwitterで話題にした某氏の弁。
 そこで思いついて「ヤマダ」ってミステリ作家、まだいたよね……と自分が今回手に取ったのが、本書である。いや本サイトでもこの作品のレビューはまだ無いし、表紙のヒロイン(琴乃)がなかなか可愛いので。
 あー、限りなくスーダラに読む本のセレクトをしてしまったぜ(笑)。

 そんな訳で今をときめく鮎川哲也賞、その受賞作家の一人であるこの作者の著作を読むのはこれが初めてなのだが、内容は全5編の連作短編謎解きミステリ。事件の捜査現場に琴乃が足を運ばない安楽椅子探偵ものが基調だが、第4話での大雪時のバス周辺の殺人事件など、主人公コンビの直近で事件が起きる例外的なものもある。
 各容疑者が犯行可能かの可能性を絞り込み、あるいは事件の真相を仮想してそこから演繹的に真犯人を追い求めていく手順は総じて手堅いし、第1話や第5話の密室トリックなど現実に本当に可能かは微妙なれど、ビジュアル的にそれぞれちょっと面白い創意のものがあるのも悪くない(第1話の方はどこかで見たネタのバリエーションという気がしないでもないが)。さらに第4話の琴乃の逆説論理なんか、なかなか豪快だし。

 ただまあちょっと不満なのは、堅実なライトパズラーなのは良いとして、これって設定からしても一応はキャラクターものミステリの仕様なんだよね? あまりにも主人公コンビの関係性がサバサバしたまま終る。フツーの腐れツンデレラブコメにしたくないという送り手の矜持はまあよしとしても、もうちょっと潤いがあってもいいんじゃないの? なんのためにこんなラノベチックなキャラ設定にしたのかほとんど意味がない。編集サンにキャラ受けする設定で書いてねと枠組みを押しつけられ、そのままキャラ同士のかけあいを活かせないままに一冊分できてしまった。あるいはラブコメにしたら負けだと思ってしまった結果であろうか。万が一もしそうだったとしたら、そういった方向で肩肘張ってもつまらんな、という感じなのだが。できればシリーズの続刊で主人公コンビの関係を、ごくうっすらとでもいいから深めてほしい。

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