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ミステリの祭典

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悲劇のクラブ
プロゴルファー リーの事件スコア

作家 アーロン&シャーロット・エルキンズ
出版日2013年01月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2022/02/19 16:15登録)
(ネタバレなしです) 2005年発表のリー・オフステッドシリーズ第5作でシリーズ最終作です。ハワイの名門ゴルフクラブを舞台にしていますがファンタジー小説に出てきそうな暗号文の謎解きが楽しいです。できれば見取り図を付けて図解してほしかったですね。犯人当ての謎解きも巧妙な伏線を回収しての推理が印象的です。本書のリーは前半は全く謎解きに興味を示さず後半はどちらかと言えば冒険スリラーのヒロイン的な役割になっていて、別人が名探偵役にふさわしい活躍をしているところは読者評価が分かれるかもしれません。でも本格派推理小説としては「悪夢の優勝カップ」(1995年)に匹敵する出来ばえだと思います。

No.1 7点 Tetchy
(2013/02/08 00:23登録)
シリーズ第5作にして最終巻。
前作のエンディングで述べられていたグレアムとの結婚式を兼ねたハワイでのゴルフイベントの参加が本書の物語。つまりリーはスチュワート・カップで起きた殺人事件に続いてすぐのイベントで殺人事件に巻き込まれたことになる。一介のプロゴルファーが訪れる先々でこんなに頻繁に殺人事件に出くわすなんて、いやあ、これは何でも無理があるでしょ。とはいえこんなのはシリーズ物には付き物の設定。そこら辺は気にせず読むのが吉。

いつものエルキンズのユーモア溢れる舞台設定の中に織り込まれた謎はクラブの会長ハミッシュの殺人事件の真相とその犯人捜しに加え、クラブに伝わる誓いの詞の意味、そして“母なる火山の女神ペレの平和会”(<フイ・マル・マクアヒネ・ペレ>)なる団体が探しているカンバーランド・メモリアル・カップの在処だ。しかも誓いの詞がメモリアル・カップの在処を示す暗号になっているという宝探しの趣向が織り込まれている。
この暗号解読の過程はなかなかに面白い。単なる伝統あるクラブの古式ゆかしい呪文のような詩かと思いきや、きちんと意味が通じる暗号になっているのには驚いた。
しかもエルキンズが得意とする時制のずれを利用したトリックが実に有機的に働いている。実は眼前にそれを示されているのに暗号解読のその時までその齟齬に気付かなかった。実に素晴らしい手際だ。

たった280ページの作品の分量にミステリ興趣をくすぐるネタをふんだんに盛り込んでいる。その読みやすさと親しみやすいキャラクターゆえにコージーミステリと軽んじられているエルキンズだが、そのミステリマインドと本格スピリットは筋金入りだ。

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