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ミステリの祭典

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歌麿殺贋事件
塔馬双太郎シリーズ

作家 高橋克彦
出版日1988年04月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 nukkam
(2016/01/22 10:26登録)
(ネタバレなしです) 「北斎殺人事件」(1986年)に続く塔馬双太郎シリーズ第2作にあたる作品です。もともとは短編作品で、第一短編の「歌麿の首」が「北斎殺人事件」より早い1984年に出版されています。1987年までに発表された5短編を統合し、新たに書かれた物語を加えて6章形式の長編として1988年に出版されました。物語は各章で完結しているので長編というより連作短編風です。殺人事件は起きず(自殺はある)、美術品の真贋を扱っていますが単に本物か贋物かという謎解きでなくなぜ贋物を世に出したのかという動機の方に重きを置いた物語が多かったです。中にはいかにして悪徳業者をこらしめるかというコン・ゲーム(だまし合い)的な作品もあります。美術を扱ったミステリーとしては比較的読みやすい作品ですが、自分で謎解きをしたい読者にはあまり勧められません。

No.1 6点 kanamori
(2013/03/03 11:42登録)
浮世絵三部作の2作目「北斎殺人事件」から登場する美術研究家・塔馬双太郎を探偵役に据えた連作短編集。美術雑誌編集者の「わたし」をワトソン役にして、歌麿が絡む贋作疑惑・詐欺商法など6つの事件を解決していく。

作者の造詣の深い分野だけに、美術雑誌社や評論家を誤誘導し浮世絵好事家の裏の裏を突く悪徳業者の多様な騙しのテクニックがリアルっぽくて興味深い。後半の数編は、塔馬が悪徳業者を逆に嵌めるコンゲーム風の面白さがあります。
なかでは、プロの美術評論家との虚々実々の真贋対決と意表を突くトリックが冴える「歌麿真贋勝負」と、塔馬が”写楽=歌麿説”を開陳する「歌麿の秘画」が印象に残りました。

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