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ミステリの祭典

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かめくん

作家 北野勇作
出版日2001年01月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点 メルカトル
(2016/09/05 22:27登録)
第二十二回日本SF大賞受賞作。
どこか掴みどころのない作品だが、時折まさにSFといったような表現が飛び出して驚かせたりもする。
かめくんはカメ型ヒューマノイドであり、レプリカメとも言うらしい。本作はかめくんの日常を抒情的に描いた連作短編のような作品である。かめくんが、図書館で本を借りたり、家で猫を飼ったり、倉庫でリフトに乗り働いたり、たまに、いや結構推論したり、ワープロを打って人に訴えかけたり、ある女性にほのかに好意を抱くようだったり、つまりはそういった何でもないような出来事をユーモアを交えて描かれている。だが、かめくんには持って生まれた役目があるらしいのだ。それは木星戦争に関係しているらしいのだが、正確なところは最後まで明らかにされない。
終盤、かめくんが「たねがしま」に向かい、家を出て知り合いに別れを告げる辺りはなぜか切なさが込みあげてくる思いがしたものだ。
本作はSFとしては勿論、一つの小説としても評価できる、実に味のある逸品ではないだろうか。

No.1 8点 ボンボン
(2012/10/13 21:48登録)
 これはなんだろう。哲学書? のんびりとした日常から物凄いSF叙事詩が染み出してくる謎だらけのお話だった。かめくんのしんみりとした諦観が、胸に迫る。かわいいような悲しいような不思議な感覚。いろんなところから漏れ聞こえてくる話を総合すると、この世界はかなりめちゃくちゃな状況なのではないかと思われるが、どこまでがどうなのか不明。
 主人公のかめくんがしゃべることができず、思うだけ、或いは書いた文章を人に見せてコミュニケーションするので、文面上、珍しい読み心地になっている。

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