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ミステリの祭典

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緑の檻

作家 ルース・レンデル
出版日1988年07月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 8点 HORNET
(2023/01/14 19:25登録)
グレイ・ランストンは資産家の夫をもつドルシラと不倫関係にあったが、「夫を殺そう」というドルシラのそら恐ろしい持ちかけに応じることはできず、別れた。しかし、そんなことさえなければグレイは、ドルシラと関係を続けていたかった。ドルシラを思い悶々と過ごす日々の中、少しずつ事態は動いていく。

 女性に恋をし、別れたことがあれば誰しも経験するであろう男の未練、妄執を巧みに描いた、非常にレンデルらしい作品。別れた女性との過去を断ち切り、生活を送ろうとする男の日常が淡々と描かれているようで、物語は後半に一気に加速する。
 レンデルのノンシリーズをいくらか読んでいるので、ある程度行く先は予想ができたが、それを踏まえても面白い。
 普通の人間が誰しも抱えうる暗部を巧みにえぐり描き出す、著者の「らしさ」が出ている快作。

No.1 6点 Tetchy
(2012/09/18 23:08登録)
いつか2作目を書かねばと思いながら、まだその時ではないとずるずる引き延ばし、いざとなったら書けるだろうと楽観的に構えている男。
世の小説家の中には一瞬ギクリと思う人もいるかもしれないし、また小説の創作に限らず、過去の栄光を引き摺って生きている周囲の誰かに思いを馳せる人もいるかもしれない。
そんな彼の、実に惨めたらしい日常生活の描写とかつての恋人、人妻ドルシラとの日々の回想が交互に語られる。

とにかくレンデルはダメ男の心情を描くのが上手い。身近にモデルとなるような男がいるのかと思うくらいリアルだ。特にグレイがドルシラが再会したいのになかなか連絡が取れずに悶々とする件や連絡が取れないことを自分の都合のいいように解釈して納得させようとする心理描写は実に真に迫って面白い。斯くいう私もかつて失恋を経験したが、そこに至る直前の危うい状態の時に連絡が付かなかった時は確かに1分が10分くらいに感じるほどのまどろっこしさを感じたものだ。
さて今回作者が描きたかったのは大人になりきれない人に対する警句ではないか。後半作中で繰り返されるのはもう子供ではないんだという言葉からもそれが読み取れる。

しかしミステリとしては小粒だろう。悪妻ドルシラの犯罪計画は見え見えだし、これは冤罪を被せられた男から描いた作品であり、その趣向は面白いのだが、あまりに単純すぎた。犯行がグレイの心に降りてきてドルシラの放った言葉の真意が解るというのは筆巧者レンデルならではだが、それもどこかダブルミーニングというよりも単純な仄めかしとしか取れず、インパクトは薄い。

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