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ミステリの祭典

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アルカード城の殺人
アビー・ウェストレイク共著

作家 ドナルド・E・ウェストレイク
出版日2012年06月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 nukkam
(2016/03/20 07:00登録)
(ネタバレなしです) アメリカのドナルド・E・ウエストレイク(1933-2008)は泥棒ドートマンダーシリーズやリチャード・スターク名義で発表した悪党パーカーシリーズなど100冊以上の作品を発表した巨匠ですが、どうも本格派推理小説とは縁がなさそうな作家との印象を私は持ってました。その彼が妻でパズル作家(ノンフィクション作家と紹介している文献もあります)のアビー・ウエストレイクと共同で1987年に発表した本書は意外や本格派推理小説でした。但し毛色がかなり変わっていて小説オリジナルでなく、ホテル宿泊客が謎解きに参加する推理イベント「ミステリー・ウィークエンド」(1977年から毎年開催)を本で再現したものです。小説というよりもゲームであり、読者は犯人当てだけでなくクイズ形式の様々な謎解きに挑戦してハイスコアを目指します(このクイズは本書専用に設定されたものです)。登場人物同士の会話は短いナレーションの中だけ、後は1人1人の証言のみという構成で小説として楽しめるものではありませんが、意外とすらすらと読める作品でした。とはいえ紙上参加よりは実際のイベントに参加する方がはるかに楽しめるのでしょうね。動機重視の謎解きになっていますが、物的証拠が少ないので推理の説得力が少し弱いような気がします(この人は動機がないので犯人ではないというのはかなり強引な結論)。

No.1 5点 kanamori
(2012/08/25 23:12登録)
トランシルヴァニアの森に建つアルカード伯爵の古城で発生した図書館司書殺しの犯人当てミステリ。ウェストレイクには珍しいフーダニットものですが、実のところは、”ミステリー・ウィークエンド”という一般参加者が出題された謎を解くミステリ・イベントのノベライズです。
推理データとして、十人以上の容疑者の一人一人の証言を順に読んでいくうちに事件当時の状況が分かって来る構成で、各人の怪しげな個性を浮き彫りにする語り口に作者らしさは覗えるものの、決め手となる手掛かりが十分とは言い難く、犯人特定のロジックが弱いのが物足りないです。むしろ、ドラキュラ伯爵、狼男、フランケンシュタイン博士などを想起させる怪奇小説のパロディ的雰囲気を味わうのが吉かと。

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