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ミステリの祭典

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腐蝕の構造

作家 森村誠一
出版日1972年11月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 8点 斎藤警部
(2015/06/22 16:08登録)
社会派と言うより、社会悪を最高のスパイスに(恋愛を下地のサワークリームに)使った本格推理。
離れ離れになった一組の夫婦(夫は原子力研究者)を中心に、山を背景にした人間ドラマあり、ホテルでの密室殺人あり、巨悪への研ぎ澄まされた憤り(といつもの左翼演説)あり、様々なレベルで森村氏、キャリア最初期の集大成トライアルと言った趣がある。 物語の途中で主人公が切り替わり、誰が「腐食」しているのか、の見え方も変わる。 ずっしり重いエンタテインメント巨篇。
義父から借りて読みました。

No.1 7点
(2012/08/25 11:56登録)
森村誠一が日本推理作家協会賞を受賞した大作ですが、なぜか『高層の死角』や『人間の証明』に比べると知名度は低いようです。
しかしこれは読みごたえがありました。森村が社会派的な傾向を強めるきっかけになった作品とも言われていますが、作者は以前の作品でも事件の社会的背景、特に企業の悪辣な駆け引きを何度か取り上げてきました。ただ、以前にはアリバイや密室などのトリックをメインにした謎解き要素が強く、警察の捜査が中心になっていたのに対して、本作ではダイナミックで意外なストーリー展開が読みどころになっています。作者お得意の登山が繰り返し、季節を変えながら描かれ、話を盛り上げてくれます。
まあ、実のところ本作唯一の殺人は密室的状況ではあるのです。しかし作中の図を見る限りでは、実行不可能と言わざるを得ませんし、不可能状況を作り出した理由をちょっと考えれば犯人は明らかです。

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