home

ミステリの祭典

login
モルフェウスの領域

作家 海堂尊
出版日2010年12月
平均点4.50点
書評数2人

No.2 5点 E-BANKER
(2017/07/09 19:40登録)
2010年発表。
「モルフェウス」とは、ギリシア神話にも登場する“夢を司る神”のこと(のようです)。

~桜宮市に新設された未来医学探求センター。日比野涼子はこの施設で世界初の「コールドスリープ」技術により人工的な眠りについた少年の生命維持業務を担当している。その少年・佐々木アツシは両眼失明の危機にあったが、特効薬の認可を待つために五年間の<凍眠>を選んだのだ。だが少年が目覚める際に重大な問題が発生することに気付いた涼子は、彼を守るための戦いを開始する。人間の尊厳と倫理を問う、最先端医療ミステリー~

これもまた一連の「桜宮サーガ」につながる物語。
といっても、田口・白鳥コンビが主役を務める「本筋」のストーリーではなく、あくまでサイドストーリー的な位置付け。
これまでの作品でいうと、「ジーン・ワルツ」=「マドンナ・ヴェルデ」の流れに相似している。
(芯の強い女性が主人公で、現在の法律の矛盾を問うという作品姿勢も共通)

今回のテーマとなる「コールドスリープ」。
ウィキペディアによると、2016年現在、全世界で約350人が冷凍保存されていて、日本ではまだ人体を保存する施設はないが、日本トランスライフ協会という団体が、アメリカ・ロシアの保存施設へ空輸するサービスを取り扱っているとのこと。
(知らなかった・・・)
ひと昔まえのSF小説では、こういう手の話がよく登場してきたけど、もはや技術的には可能な領域に入っているということなのだろう。
で、問題となるのは、社会的或いは法律的な取り扱いということになる。
まぁ「不老不死」というのは永遠の憧れというか、最終的な夢or欲望だしねぇ・・・
金に糸目をつけない方々にとっては、最も興味のある技術なのだろう。

ただ、「コールドスリープ」に対する海堂氏のスタンスは、これまでのAiなどと比べると微妙な感じだ。
そもそも本作執筆の動機がやや不純なだけに(佐々木アツシの設定に関する矛盾の解消?)、いつもなら流れるようにほとばしる台詞まわしも、本作はやや歯切れが悪い。脇役として登場する田口や高階院長もいつもの感じではない・・・
ということで、いよいよシリーズのパワーダウンが明白化してきた、ということかな。
一応続編(「アクアマリンの神殿」)も読むだろうけど・・・

No.1 4点 take5
(2016/11/23 20:23登録)
何方がミステリー登録したのでしょうか。
生体保存の法的根拠をめぐる、
最後の落としどころがなるほどと思わせる
ミステリーということ?!
海堂作品は他の方がミステリーですね。

2レコード表示中です 書評