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ミステリの祭典

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金田一耕助の新たな挑戦
金田一耕助

作家 アンソロジー(出版社編)
出版日1996年02月
平均点4.00点
書評数2人

No.2 5点 メルカトル
(2021/03/27 22:48登録)
ぼさぼさの髪、よれよれの袴、人なつこい笑顔が印象的な、色白で内気な好青年…。横溝正史が生んだ日本を代表する名探偵『金田一耕助』が歴代の横溝賞作家たちの手によってよみがえる―。戦後の混乱時に起こった哀しき犯罪をあざやかに解決する金田一耕助。海外で初の難事件に挑む金田一耕助。そして、現代まで生き、八十歳で事件に遭遇してしまう金田一耕助など様々なトリックが仕掛けられた事件に新たに挑戦!横溝ワールドへの入門書としても役立つベストアンソロジー。
『BOOK』データベースより。

横溝正史賞作家九名による、金田一耕助が活躍する短編パスティーシュ集。
亜木冬彦の『笑う生首』、姉小路祐の『生きていた死者』、藤村耕造の『陪審法廷異聞―消失した死体』以外は正直箸にも棒にも掛からない出来の作品ばかりです。とはちょっと言い過ぎかも知れませんが、まあ誉められたものではありません。それだけ横溝正史賞のレベルが低いって事でしょうかね。

霞流一の『本人殺人事件』は『本陣殺人事件』のトリックや犯人のネタバレを派手にしていますので、未読の方は要注意です。他作品にも『本陣殺人事件』に関する記述が多いですね。金田一耕助の人物像の描き方は、各作家により微妙に違っており、中には最後の事件と称するものや渡米してからの事件を描いたものもあり、枯れてちょっと不遜な感じの言葉遣いをしている金田一もいたりします。
それはまあ良いとして、全体的に探偵金田一の個性に頼った物語が多く、読み物として面白味のない作品が目立ちます。凝ったトリックもなく、猟奇事件の動機がありきたりだったり、ミステリとしてあまり感心しないですね。

No.1 3点 大泉耕作
(2012/06/14 23:14登録)
 横溝正史賞受賞作家達が新たな視点から描く金田一耕助の探偵譚と・・・。

 自分のなかでは横溝正史賞受賞作のほとんどは、社会派に偏ったものが大半を占めるという印象があります。なのでガチガチの本格物である金田一耕助シリーズを社会派が書くということで、読む前からあまり期待はしていませんでした。
その予想は当たったと言えます。三百ページに九作品も収録されているわけですが、少なくとも六作品に登場する金田一は、「金田一耕助」という同姓同名の、『本陣~』や『獄門島』という同じ名のつく殺人を解決したまったくの別人。

亜木冬彦「笑う生首」
 読後にも?を残してしまう。設定に矛盾がありすぎる。
姉小路祐「生きていた死者」
 文書は安定していて、トリックもこの頁数(約三十頁)なら頷けるシンプルさです。
五十嵐均「金田一耕助帰国す」
 著者は『Wの悲劇』の著者である夏樹静子の実兄とからしく、エラリー・クイーンと親交をもちその没年までミステリの指導を受けていたそうな・・・。どうでもいい。ミステリ的には非常弱い。
霞流一「本人殺人事件」
 『本陣殺人事件』のパロディ。横溝正史賞や金田一耕助像の登場など、メタミステリの形式。ミステリとしては断然弱い。本陣のトリックの使い回しのようで、新鮮味が感じられません。
斎藤澪「萩狂乱」
 著者は角川映画でも知られている『この子の七つのお祝いに』で第一回横溝正史賞を受賞した方らしい。僕もあの作品は好きですが、この作品は評価するに値しない。自分の推理は絶対だ、などと振りまく金田一を見たらマイナス点数さえやりたくなる。そして真相も御都合主義と強引に尽きる。
柴田きよし「金田一耕助最後の事件」
あとから思えば設定こそ滅茶苦茶ですが、この作家が最も横溝正史の世界に近いものを演出しています。トリック、奇っ怪な証拠の提示の流れがテンポ良く、それも大分スマートな作りになっているので割合好感は持てました。
五十嵐均「髑髏指南」
結局意味のわからん事件で終わった。文章が上手かったら冒頭の奇っ怪な出来事も上手く描けただろうに・・・。
羽場博行「私が暴いた殺人」
 ミステリとしては水準地点に達していると言える。きっちりフェアにおさまっています。しかしながら、これのどこか金田一シリーズなんだ? 舞台がアメリカなだけに、台詞の使いまわしを見るとまるでハードボイルドだ。
藤村耕造「陪審法廷異聞━━消失した死体━━」
 台詞の描き方がこの短編集でも秀逸していると言えます。トリックも横溝正史らしいかといったら、らしいです。

 編集者の作家選択が誤っているのか、あるいは受賞した作家たちの実力の低さが表れているのか・・・。横溝ファンは買うべきじゃないと思います。

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