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ミステリの祭典

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推理作家殺人事件

作家 中町信
出版日1991年11月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 nukkam
(2019/12/10 21:33登録)
(ネタバレなしです) 専業作家になってからの中町信は執筆ペースが上がり読みやすさを重視する一方で、兼業作家時代の凝りに凝った謎解きプロットが読めなくなってしまったと評価する向きもあるようですけど、1991年発表の本書は専業作家時代の作品としてはかなりの力作の本格派推理小説ではないでしょうか(タイトルが安易過ぎて損していますけど)。立風ノベルス版の裏表紙で「ウルトラどんでん返し」とアピールしているのも決して誇張ではないと思います。どんでん返しの成功はどんでん返しの前にいかに多くの読者を納得させるだけのミスリードが用意されてるかにかかってますが、本書の場合はそこが巧妙です。残された容疑者数が多くないので犯人は何となく見当がつくかもしれませんが、犯人が当たったかどうかだけで一喜一憂するのはもったいないです。作者が丹念に敷いた、真相に至るまでの筋道を辿る楽しみを多くの読者に味わってもらいたいです。

No.1 6点 kanamori
(2015/04/30 18:28登録)
ミステリー小説界の長老で資産家の松山が旅先の男鹿温泉で崖から転落死し、つづいて、事件の裏事情を知るらしい編集者や推理作家が次々と殺害される。担当編集者の和泉百々子は、秋田に住む推理作家の増尾とともに、松山の旅程を辿り事件の真相を探るが--------。

立風書房ノベルズから1991年に出版されたノン・シリーズ長編。
マンネリに陥っていたこの時期の中町ミステリのなかでは、比較的良作の部類に入ると思われる作品です。
はじめに意味深なプロローグが配され、男女の素人探偵による温泉トラベル・ミステリの様相で展開し、真相を知る人物がバッタバッタと殺されていき、凝りすぎのダイイング・メッセージも出てきて......という、プロットは中町ミステリのテンプレート通りなのですが、ラストの二段階のどんでん返しに繋がる小説全体の仕掛けで読者を予想外の着地点に導きます。
動機のミスリードという中町ミステリの定番の手筋に、さらにひとヒネリ加えているところが巧妙で、最終章前に真犯人にたどり着ける読者は少ないのではないでしょうか。

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