野蛮なやつら |
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作家 | ドン・ウィンズロウ |
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出版日 | 2012年02月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | kanamori | |
(2012/04/01 22:32登録) ”犯罪小説というジャンルの枠を叩き壊し”ているかは分からないが、シナリオ風のセンテンスを織り込み、スラングや作者の造語で溢れ弾けた文体は、ウィンズロウ節の進化形なんだろう(このあたりは、3作ぶりに還ってきた翻訳の東江さんの功績もあると思う)。細かく章割されていることもあって読む者をグイグイ引っ張ってくれる。 同じ様にメキシコの麻薬カルテルとの戦いを描いた「犬の力」が先にあるだけに、それと比べると物語が小粒でストーリーに新味が感じられない点はあるが、主人公・男女3人の関係は、作中でも触れられている映画「明日に向かって撃て!」を髣髴とさせるところがあってよかった。脇役のオフィーリアの母親もいい味出してます。 |
No.1 | 8点 | Tetchy | |
(2012/03/18 20:11登録) 読み終わって大きな息が思わず出てしまった。怒涛の展開で連打の如く畳み掛ける言葉の嵐。今回の物語で要した章は289にまで上る。正味460ページ足らずの分量でこの章の多さ。いかに切りつめられた章立てであるかが解るだろう。 ウィンズロウの文体はもはや詩である。短文の連発で散文的に書かれた語り口は彼独自のリズムで物語が展開する。固有名詞(62章を見よ!)に略語にスラングの応酬で綴られるその文章にはまぎれもなく行間から“声”が聞こえてくる。つまりはこの声を生かしたままで日本語に訳している東江氏の素晴らしい仕事ゆえに私達はウィンズロウが耳元で囁くかの如きライヴ感溢れる文体に酔うことが出来た。 『犬の力』で我々に見せてくれたメキシコの麻薬社会の現実を下敷きにベン、チョン、Oの三人と麻薬カルテルとの戦いを描いた本作は彼ら三人の青春物語であり叙事詩であり伝説。こんな物語、ウィンズロウにしか書けないわ! |