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ミステリの祭典

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殺人者は道化師
軽井沢夫人探偵ノート

作家 梶龍雄
出版日1988年12月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 nukkam
(2016/08/17 11:39登録)
(ネタバレなしです) 作者晩年の1989年に発表された短編集で、収められた7作品全てで探偵役が本名不詳の妖艶なリラ夫人、助手役がパックちゃんという少女です。パックという名前がシェークスピア作品の妖精名に由来しているからでしょうか、廣済堂ブルーブックス版の表紙には「痛快マジカル・ミステリー」という奇妙な宣伝文句が入っていますが別に魔法とか超能力とかは登場しません。短編なので描写はあっさりながらベッドシーンが随所で挿入されて通俗色がありますが本格派推理小説のツボは押さえていて、どの作品も推理による解決で締め括ります。表題作の「殺人者は道化師」などはかなり論理的に犯人を絞り込んでいます。リラ夫人は事件に巻き込まれて困っている依頼者(女性限定)を無報酬で助けるというスタンスですが、その裏でちゃっかり(多くは違法な手段で)稼いでいるところがモーリス・ルブランの「バーネット探偵社」(1928年)を連想させます。

No.1 5点 kanamori
(2012/03/21 22:04登録)
軽井沢の別荘に住む謎の女性・リラ夫人の探偵譚7編収録。
読者サービス的な官能シーンが適度に挿入されていますが、どの作品も骨格はきっちり本格ミステリしてます。探偵助手で奔走するボーイッシュな少女の言動がいかにもカジタツ風で、その点は馴れが必要です。
このような”裏の顔”をもった探偵役というのは当時の国内ミステリでは珍しいと思うのですが、枚数の関係もあって設定があまり活かされていないのはもったいない感じがします。
個々に見てみると、とくに飛び抜けた傑作と言うのはないが、アリバイ奪取トリックの「女優エリカの悪夢」がベストかな。密室状況からの宝石消失トリック「消失の闇」もまずまず。どちらもさりげない伏線が効果的に使われています。

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