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ミステリの祭典

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装飾庭園殺人事件

作家 ジェフ・ニコルスン
出版日2011年09月
平均点3.50点
書評数2人

No.2 5点 人並由真
(2020/07/06 04:45登録)
(ネタバレなし)
「おれ」こと、ロンドンにある「ハンコック・ホテル」の警備責任者ジョン・ファンサムは、美貌の女性リビー・ウィズデンから一週間の契約で、調査の仕事を受ける。リビーの願いとは、彼女の夫で有名なタレント造園家リチャードが少し前にこのホテルで死んだ、自殺とみなされているが疑いがあるので生前の関係者を調べてほしいというのだ。もともとファンサムはホテルの警備係として、この件にも関わっていた。だがリビーはファンサムのみならず、あちこちの男女に夫の死についてのさまざまな調査を依頼。共稼ぎで当人も食通の人気コラムニストとして活躍しているリビーには、多くの人間を動かすだけの資産があった。リビーの友人である女医モーリン・テンプルや、リチャードの愛人アンジェリカを初めとする少なくない数の男女がこの件に巻き込まれるが、やがて事態は思わぬ方向に。

 1989年の英国作品。本サイトでのkanamoriさんのお怒りのレビューと極端な評点がかなり破壊力があったので、気になって「そんなにヒドいのですか。どれどれ……」と、古書を通販で購入して読んでみた(そうしたら帯付き、さらにスリップまで残っている、デッドストック級の極美本が届いた)。

 章が変わるごとに(あるいは同じ章の中でも)話し手(一人称)が交代。最初の話者「おれ」=ファンサム以外にもモーリンやアンジェリカを皮切りに、最終的に本文のなかに10人近くの「わたし」「あたし」が並ぶことになる。
 物語の大きなモチーフのひとつは、題名の通りに人工的に組み上げられた造園(庭園)だが、それにシンボライズされるように、正にこれは読み手を迷宮のごとき造園の場に誘い込んで鼻面を引き回すミステリ。そのくせ作品のスタイルとして、トリッキィなフーダニット、あるいはホワットダニットのパズラーっぽい雰囲気もあるから、いろんな意味で目くらましされてしまう。

 前述のとおりに視点がコロコロ変わるからその意味ではちょっと煩わしいが、お話そのものは章単位では別段ややこしいことはなく、総じて平明。なんでここでこのキャラの挿話が語られるかな? といった配列上の疑問が生じることはあるが、難解とか読者置いてきぼり、といったことはたぶんほとんど無いと思う。ただしセックスというか性愛に関しての物言いと諧謔はかなり多いので、これから読む気のある人は、その点だけは前もって了解の上で。

 でまあラストのオチですが、ああ……という感じのぶっとんだ説明で決着。まあ改めてまともなパズラーじゃ絶対にないよね。トリッキィな作品ではありますが。
 とはいえ(Amazonのレビューで同じことを言っている人もいますが)、語られた真相もどこまで本当なのか眉唾もので、その辺のどっか煙に巻かれた気分のまま本を閉じるのがこの作品の正しい読み方ではないかと(笑)。まあたまにはこういうのもあっていいんじゃないんですか、という感想です。

 なお長々と文字数を費やして、この作品の観念的な部分にご大層な解釈を設けた巻末の解説(訳者あとがき)には最大級の努力賞を進呈したい。

No.1 2点 kanamori
(2012/02/13 23:53登録)
内容紹介欄に”伝説のメタ・ミステリー”とあったので、ある程度の脱力感を覚悟していたのですが、許容範囲を超える真相でした(笑)。ミステリのプロパー作家が書いたものだったら最低点にしていたかも。
作者はミステリを書いたつもりはないと言うかもしれないが、発端の不審死から始まって、多くの関係者たちの脱線気味の語りによる真相解明へのプロセス、最後は一同を集めた謎解き披露と、いちおう本格ミステリの体裁をとっていて、このオチはないでしょう。

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