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ミステリの祭典

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おまえさん
「ぼんくら」シリーズ 3

作家 宮部みゆき
出版日2011年09月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 5点 ALFA
(2022/04/12 09:58登録)
作家の個性は失敗作にもよくあらわれる。宮部みゆきは筆がよく走る。湧いて出るような表現は心に刺さる名文にもなるが、時にはあふれかえって過剰になる。この作品ではすべてが過剰である。

過剰その1.   
長い!ひたすら長い!シリーズ第一作「ぼんくら」が上下合わせて600ページ余り。一方この「おまえさん」はなんと上下合わせて1200ページ。しかも前作のような連作短編+長編ではなく、まんま長編。
とくに、弓之介によるエルキュール・ポワロばりの謎解きシーンや終盤の捕り物場面が冗長で興をそぐ。ここはキリっと引き締まった緊迫感が欲しいのに。
過剰その2.  
作者は男の顔の美醜にフェティッシュな興味でもあるのだろうか。言及があまりにも過剰で辟易する。弓之介の美しさに関しては「ひいきの引き倒し」レベル。一方、若手の同心間島信之輔の醜さについてはイジりすぎ。生真面目なキャラはさわやかなのだから無骨な青年くらいでいいではないか。
過剰その3.  
キャラが増えすぎた。間島信之輔と傷の太刀筋を見抜いた本宮源右衛門はいいとしても、弓之介の兄淳三郎は中途半端。キャラは魅力的だが行動は大店の三男坊としては不自然。

さて、ストーリーだが、一見関連のない三人が同じ太刀筋で殺される。調べてみるとそのうち二人には過去に関連が・・・
ミステリーとしてはなかなか魅力的なプロットだが途中であまりにも都合のいい告白が飛び出して・・・ 

とはいうものの人情噺としては十分に楽しめる。なんといってもキャラは立っているし筆は滑らかだ。

スピンオフでいいから、代替わりした美形同心井筒弓之介の活躍を書いてくれないかな。くれぐれも短編で。


No.2 6点 itokin
(2017/03/20 12:50登録)
相変わらずの江戸時代の庶民の生活絵物語を見ているような描写力は素晴らしいですね。しかし、長さの割に物語の起伏が少なく少しだれたように思う。ごめんなさい単にこのような人情噺的なものは私には合わないことかもしれない。

No.1 7点 白い風
(2012/04/19 00:17登録)
上下あわせて、約1000ページ以上の大作でしたが、最後まで飽きることなく楽しめました。
題名にもなっている「おまえさん」もそうですが、その後の「残り柿」「転び神」「磯の鮑」がスピンオフ的な味わいがあってより楽しめました。
今回も新しいメンバーが増えてきたけど、益々今後の展開が気になりますね。
特に三男の淳三郎に期待したいですね。

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