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ミステリの祭典

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王様のトリック
先行作「ドクターM殺人事件」の加筆、内容変更

作家 吉村達也
出版日2005年04月
平均点4.50点
書評数2人

No.2 3点 sm556s
(2018/04/25 09:06登録)
物語としてはまあまあなんだけど、これはジャンルとしては本格推理ではないね。
<以下ネタバレあり>
犯人が終盤で明らかになるんだけど、論理的必然性がないため、インパクトがない。犯人を明らかにした後で、実のこの人は関係者とこういった関係でした、と後出しされても・・。また、あらゆる面でしっくりとこない。まず、タイトル、それから犯人が二人であるということがあらかじめ示される、という着想は良いんだけれど、実質的な犯人は一人で、その犯人が最後に残った一人に自分を殺させることで犯人側が二人になる、というくだりは、”え?何それ?”って感じ。トランプのハートのキングの話もよくわからない。説いた具合で、点数としてはせいぜい3点かな。

No.1 6点 名探偵ジャパン
(2015/08/31 19:14登録)
大物政治家の招待状により、山中の館に呼び寄せられた五人。いずれも名字のイニシャルが「M」で始まることが共通項のメンバーたち。猛烈な吹雪で館に閉じ込められた五人は、「五人の中の二人が殺人者である」という意味のトランプによるメッセージを発見する。全く面識のない五人の中に疑心暗鬼が芽生え始め……

2012年に胃がんのため逝去した吉村達也の作品。
「吹雪の山荘」「イニシャルが同じ五人」「トランプで示される殺人予告」等、本格ファンが喜びそうなガジェットを詰め込んだ意欲作。
犯人が二人、と明示されているのが面白い。例によってメンバーは次々に殺されていくのだが、二人まで殺され三人になった時点で、犯人ではない人物は、もう自分以外の二人が共犯同士であると確信できてしまうわけだ。もちろん犯人は、「自分です」などと名乗ったりしない。通常であれば、「自分以外の二人のうちどちらかは味方だ」という一縷の希望があるわけだが、この場合にそれはない。三人が三人とも、「お前らがグルなんだろう」と警戒し始める。嘘をついているのは誰なのか。残り三人になってからの展開が見所。
だが、元々無理のある設定に収集をつけるために、多少強引な展開にしか持って行きようがなかったのは、残念というか、仕方のないことかも。

2005年に「ドクターM殺人事件」として出版されたものの改題、加筆バージョンだそうです。

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