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ミステリの祭典

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魔女の暦
金田一耕助シリーズ

作家 横溝正史
出版日1958年01月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2021/07/25 23:23登録)
(ネタバレなしです) 1956年に短編版が書かれ1958年に長編化した金田一耕助シリーズ第16作の本格派推理小説です。文庫版で200ページ程度で長編作品としては短めのためか角川文庫版ではシリーズ短編の「火の十字架」(1958年)が、春陽文庫版では「廃園の鬼」(1955年)が併収されています。正体不明の殺人犯がカレンダーに殺人計画を書き込む場面が挿入され、金田一耕助宛てには「魔女の暦」と名乗る人物から挑戦状が送られ、ストリップ劇場での芝居の最中に行われた毒吹き矢による殺人事件に端を発した連続殺人事件が起こります。舞台も登場人物も通俗的で、人間関係もかなり乱れています。ところが(表向きは)お互い様とそれほど殺伐な雰囲気にはなってないし、捜査描写は非常に地味に展開し、唖然とするようなトリックの説明も淡々としています。抑制を効かせ過ぎたとも言えるでしょうが、エログロを強調したえぐい作品になるよりは(個人的には)好ましいと思います。

No.1 6点 りゅう
(2011/10/25 18:47登録)
 再読です。角川文庫版(「魔女の暦」と「火の十字架」の中編2作品)で読みました。どちらもダンスレビュー小屋を舞台にした連続殺人事件で、金田一耕助は殺人予告の手紙を受け取ることで事件に巻き込まれていきます。
「魔女の暦」
 謎解きとして面白い作品ですが、設定に強引さを感じます。一つ目の殺人はある心理状況を利用して行われているのですが、この心理は私には理解できません。二つ目の殺人にはかなり意表を突くトリックが使われていますが、都合よく行き過ぎで実現可能性には大いに疑問を感じます。計画段階でこのようなトリックがうまく行くと考える人はまずいないでしょう。
「火の十字架」
 犯人はいくつものトリックを仕掛けて捜査陣を欺こうとしていますが、それを見抜く金田一耕助の推理や捜査は鮮やかで、なかなかの名探偵ぶりを発揮しています。また、金田一耕助には珍しく(?)、連続殺人を途中でくい止めています。この作品も謎解きとして面白い作品なのですが、ご都合主義と感じられるところがあります。

(完全にネタバレをしています。要注意!)
「火の十字架」
 犯人は新宿から浅草に行って、そこで小栗啓三の変装をして運送会社の車にトランクを預け、新宿に引き返してそのトランクを受け取っています。しかし、これは無理ではないでしょうか。通常、運送会社の方が先に到着するはずで、その場合、新宿に不在だったことがわかってしまいます。作品中では、運送会社の車にたまたまエンジントラブルが起こり、犯人よりも遅く到着しているのですが、ご都合主義としか言いようがありません。

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