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ミステリの祭典

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変若水
向井俊介シリーズ

作家 吉田恭教
出版日2011年10月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 nukkam
(2020/12/10 21:51登録)
(ネタバレなしです) 吉田恭教(よしだやすのり)(1960年生まれ)は本業が漁師で、時化で海に出られない時に小説でも書いてみようとしたのがきっかけで作家になった珍しい経歴の持ち主です。デビュー作の「朝焼けの彼方へ 背暦の使者」(2006年)は粗筋紹介を読むと現代人がタイムスリップしての歴史冒険小説みたいですが(未読なので間違いでしたら御免なさい)、2011年に第2作として発表された本書(タイトルは「をちみづ」と読みます)は向井俊介シリーズ第1作の本格派推理小説です。古き因習の残る村の描写とPCテクニックを駆使して手掛かりを集める俊介の捜査描写との新旧の時代性対比が印象的です。トリックは専門的な医療知識が求められていること、芋づる式に解決される展開であること、あまりに複雑すぎて到底読者が自力で見抜けるような真相でないことなど本格派としては問題点も多いですが非常な力作だと思います。

No.1 6点
(2017/08/21 18:54登録)
タイトルの読みは「をちみづ」、島根県の村の名前で、まあ八つ墓村みたいなものだと思えばいいでしょう。昭和22年の出来事を描くプロローグが、平成23年の事件とどう絡んでくるのかは、早い段階で明かされます。
現代的な医療ミステリと古めかしい小村の旧家の秘密を組み合わせた作品で、ミステリ的には、フーダニット系の意外性もなくはないのですが、それより医療技術を駆使した、脳梗塞や心室細動に見せかける殺人方法のハウダニットが中心です。医学知識がないと解けない方法で、説明されても本当にそれでうまくいくのかどうかさえわからないのですが、こういったタイプはそれでいいでしょう。ただ、心室細動に見せかけるトリックは、手順をややこしくし過ぎていると思います。
文章もなかなか読ませてくれるのですが、メールやセリフの中に、地の文並みの情景描写が出てくるのだけは不自然さを感じました。

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