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ミステリの祭典

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グラーグ57
レオ・デミドフ

作家 トム・ロブ・スミス
出版日2009年08月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 E-BANKER
(2021/02/17 20:33登録)
前作「チャイルド44」の衝撃からあまり間を置かず、続編となる本作を手に取った次第。
世はスターリン政権下での粛清状態から移り変わり、フルシチョフ書記長が実権を握る時代へ・・・
レオの運命は如何に? 2009年の発表。

~運命の対決から3年・・・。レオ・デミトフは念願のモスクワ警察殺人課を創設したものの、一向に心を開こうとしない養女ゾーヤに手を焼いている。折しもフルシチョフは、激烈なスターリン批判を展開。投獄されていた者たちは続々と釈放され、かつての捜査官や密告者を地獄へと送り込む。そして、その魔手が今、レオにも忍び寄る・・・。世界を震撼させた「チャイルド44」の続編~

悲しい物語だ。
主人公レオ、妻ライーサ。レオに決して心を開こうとしない養女ゾーヤ。ゾーヤが唯一心を開く少年マリッサ。そして、今回大いなる敵として登場するフラエラ・・・ひとりとして幸福となる登場人物はいない。
タイトルになっている「クラーグ57」とは永久凍土の地シベリアにある囚人たちを収監する牢獄のこと。レオは捕らわれたゾーヤを取り戻すため、単身、敵だらけの土地に飛び込む。そこは、想像を絶するような地獄だった。
それでも希望を失わず、脱出を図ろうとするレオ。しかし、脱出した先には更なる障壁と不幸が待ち受ける・・・

いやいや辛い、つらい、ツライ話が延々と続いていく。
前作「チャイルド44」ではミステリー的な妙味もあったが、本作はそういった趣旨はほぼ見えない。全編がレオを取り巻く人々が、抗えない運命に流されていく姿が描かれている。
ソ連ってすごい国だったんだねぇ・・・。スターリン政権の粛清渦巻く社会からやっと抜け出したかと思いきや、そんなことでは長年積み重ねてきた価値観は変わらない刹那。
読むだけでも重く、辛い感情になってきた。

しかしながら、レオ一家をめぐる物語はまだ続いていく。終章でゾーヤとの関係にも一筋の光明が見えてきただけに、今後の展開は期待できるか。
作者のストーリテラーとしての能力はやはり確かだ。なんだかんだ言いながら、頁をめくる手が止まらなくなる。
次作もやはり手に取るしかないようだ。粗筋を忘れないうちに・・・
(ブタペストから奇跡の生還を果たしたレオの転職先は何と・・・パン屋だ! これってネタバレ?)

No.1 7点 kanamori
(2011/10/16 21:10登録)
旧ソ連を舞台にした冒険・警察小説、「チャイルド44」の続編。
この主人公レオ・デミドフ、かなり悲運がつきまとう運命にあるようで、フルシチョフ体制に変わったとたん今度はスターリン批判の余波で再び過酷なミッションを強いられることに-----まあ、ソ連版”ダイ・ハード”ですね。
史実をもとにした前作と違って、やや荒唐無稽というかリアリティという点で疑問符がつきますが、モスクワの下水道の追跡劇、オホーツク海での囚人護送船内の死闘、強制労働収容所のシーンなど、冒険活劇小説としては楽しめました。

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