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ミステリの祭典

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葬神記 考古探偵一法師全の慧眼
考古探偵一法師全シリーズ

作家 化野燐
出版日2011年03月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2020/10/06 19:20登録)
(ネタバレなし)
 20代前半のフリーター・古屋達司は、骨董品屋の店内で高価な壷を破損。それを弁償するために、遺跡発掘のアルバイトを始める。だがそこで不可解な殺人事件が発生し、嫌疑は身に覚えがない古屋にふりかかった。その場に居合わせた口の悪い考古学者で「考古探偵」の異名をとる青年・一法師全(いちほうし ぜん)が、事件の真相を暴く。

 文庫オリジナル(書き下ろし?)のキャラクターものミステリで、考古学の発掘作業を主題にした特化ジャンルものの謎解きパズラー。

 SRの会の正会誌「SRマンスリー」の特集「新本格発祥からの30年間に書かれた、あまり話題になってない佳作・秀作」の一本として紹介されてた作品(というかシリーズまるごと)で、興味が湧いたので古書をwebで購入して読んでみた。

 全部で本文は310ページ弱。薄めの長編かと思ったが、すなおに一本のストーリーという訳ではない。全部で四編の中編で構成され、そのひとつひとつで謎が提示されて解決に至る。ただしその上で全体としては長編ミステリっぽい結構もそなえているという、そういう作り。

 足跡のない殺人や凶器、失せ物の謎など、ミステリとしての各編はそこそこ考えられているが、基本的には解決に大きなサプライズはない。逆に言えば、各編ほとに一定の手堅さは感じさせる出来ではある。

 それなりに面白く読めたのは、主人公の古屋と発掘現場のキャラクターの距離感の変遷ドラマのおかげ。特に、たぶん根はヒューマニストながら訳ありで偽悪家の探偵役、一法師に古屋が次第に認められていくあたりの青春成長ドラマは、定石を踏んだ展開ながらなかなか心地よい。
 さらに古屋にはもうひとつ、本作全体を通した経糸のドラマが用意されているが、それはここでは触れない。個人的には余韻を感じつつ、その決着を読み終えた。

 青年コミックの、よく知らない業界のお仕事ものに触れるような興趣があった。主題となる考古学(発掘作業)への作者と登場人物の視座など自分のような門外漢の読者が接して、何かタメになったような手応えもある。

No.1 5点 makomako
(2011/07/24 09:35登録)
 考古探偵という聞きなれないエキセントリックな探偵が登場するとの見出しに誘われえて読んでみた。さすが考古学を専門としていた作者らしく極めて専門的な話も出てくるが何とか理解できた。考古学の発掘という全く知らない世界も垣間見えてこの分は興味深かったが、推理小説としてみるとイマイチ。とくにいろんな事件の黒幕を見つけるに当たってはアンフェアーな展開でしょう。巻末の銅鐸の図解も物語とは関係ないと思うのだけど何で載せたのかなあ。
 ちょっと新分野に属するような小説のなりうると思うので、次回を期待しましょう。

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