死んだギャレ氏 メグレ警視 別題「ロアール館」 |
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作家 | ジョルジュ・シムノン |
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出版日 | 1961年07月 |
平均点 | 6.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 7点 | クリスティ再読 | |
(2024/11/20 11:10登録) 国立国会図書館デジタルコレクションにて。 ロワール川沿のホテルで起きた事件に急遽駆り出されたメグレ。被害者は行商人という触れ込みで、クレマンという名を名乗って何度も泊まっていたが、実はエミール・ギャレという本名で勤め先も偽装だった。格式を見せつけようと虚勢を張るが、貧相さを隠せないギャレとその妻。人生の失敗者にしか思えない、偽りだらけの人生の男のどういう「嘘」が事件を導いたのか? こんな話。メグレ物第二作と呼ばれるけども、創元文庫の裏表紙の作家紹介では「最初の推理小説」と書かれている。まあ気持ちはわかるんだよね。「怪盗レトン」ってメグレらしくない。「レトン」以前にも脇役メグレの登場作が存在するようで、その延長線で書かれたような印象が今となってはある。ならば本作が「メグレ第一作」。あらすじをまとめたけど、これなら普通にメグレ、でしょ。 そもそもあの男は何ごとかを待ちもうけることに、その生涯のすべてを送ってきたのではなかろうか?....。ごくわずかのチャンス....それさえなかったんだ! こんな人生とミステリらしいトリックとが融合している。まあ、トリックがあるメグレ、として変に有名な作品かもしれないけど、トリックの扱いで小説としての深みを増すという佳作だ。 入手が難しい作品なのが本当に勿体ない。一部の本格マニアのシムノン敬遠も、本作が読みやすければ解消するんじゃなのか?と思うくらい。おすすめ。 (個人的にはフランス王党派の消長というのも興味ある。今はブルボン本家は断絶していて、オルレアン家vsスペインブルボン家vsボナパルティストで復辟運動が細々と続いているそうだ) |
No.1 | 6点 | 空 | |
(2011/02/04 22:05登録) シリーズ第2作ですが、初期メグレもののパターンが確立された作品と言っていいでしょう。11~13章ぐらいに分かれていて、分量的にもほぼ一定。メグレが地方で起こった事件の捜査に赴くという構成です。第1期の19冊中、パリ市内が中心舞台と言えるのは3作だけです。まあ今回はパリと地方を行ったり来たりしますが。メグレ警視についての風貌描写もほとんどなく、おなじみの名警視といった扱いになっています。 しかし、一方でミステリのスタイルという点では、まだ迷っていたのかもしれません。メグレものとしては非常に珍しい(たぶん唯一)タイプのトリックが使われています。さらに真相解明直前に、こんな手も考えられていたのだと指摘されるのは、ホームズ中の有名トリックです。 それでも、メグレによって最後に明らかにされていく死んだギャレ氏の人物像、それともう一人の人物との関係は、やはりシムノンらしい味があります。 |