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ミステリの祭典

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ブラディ・リバー・ブルース
ジョン・ペラムシリーズ

作家 ジェフリー・ディーヴァー
出版日2003年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 4点 レッドキング
(2025/05/16 23:21登録)
ジョン・ペラムシリーズ第二作。映画ロケ地を探す”ロケーションスカウト”の男が偶然に巻き込まれた射殺事件。ウクライナ系イタリア系の二人の半マフィアボスと、それぞれの相棒や殺し屋たち、イスラムシーア派(!)信望者の連邦検察官、主役同様事件に巻き込まれ下半身付随となった警官、謎の美女、警官の主治医の女医、映画関係者たち。射殺事件の真相は、極めて「個人的」な復讐劇で、後のライムシリーズ十八番のビッグツイストは、ほとんど(全然ではないが)出て来ない。が、「え! そのキャラピンチ! 」緊迫を、カットバックにてのホッと胸撫でさせるテクは、この頃からの得意技であった。ディーヴァーは読者をウツにさせない「健全作家」なのよん、良くも悪くも。

No.1 7点 Tetchy
(2011/02/02 21:44登録)
まだ2作目だが、映画のロケーションスカウトであるジョン・ペラムのシリーズはその職業の特異性から常に見知らぬ町を舞台にし、そこで彼が”A Stranger In The Town”という存在になり、町中の人間から注目を集め、忌み嫌われて四面楚歌になる状況下で物語が繰り広げられるといった内容になっているのが特徴だ。特に彼が町中の人間から注目を集めるのに、映画産業という華やかな世界に身を置いていることが実によく効いている。この設定は実に上手いと思う。

そしてこの作品には後のディーヴァーの技巧の冴えの片鱗が確かにある。特に後半の読者の先入観を見事に利用した人物の描き方による仕掛けは実に素晴らしい。

最後のシーンを読んだ時、私には次の一文が頭を過ぎった。
“警官にさよならをいう方法はいまだに発見されていない”
レイモンド・チャンドラーのある有名な作品の最後の一行だ。チャンドラーが込めたこの一文の意味とディーヴァーの描いたラストシーンのそれは全く違うものだが、ディーヴァーはこの一文を美しい風景へと昇華させてくれたように感じた。

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