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ミステリの祭典

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ハメット

作家 ジョー・ゴアズ
出版日1985年09月
平均点7.67点
書評数3人

No.3 7点
(2020/04/22 23:17登録)
ヴィム・ヴェンダース監督は好きで、『パリ・テキサス』等いくつも見ているのですが、コッポラがプロデュースした本作の映画化は未見のまま。で、その原作の方ですが、読んでいて奇妙な感じにおそわれました。主役はハメットなわけですが、いつの間にか何となくハメットの作品を読んでいるような気分にさせられてしまうのです。ゴアズは一応ハードボイルドの枠の中で様々なタイプの作品を書いているため、明確なスタイルを掴みきれず、ゴアズの小説を読んでいるという意識が、希薄になってしまうことも原因でしょうか。
作中のハメットが『デイン家の呪い』の改稿に苦労している様子が、あの珍作を知っていると笑えます。
ただラストの二重の意外性については、個人的にはそれほど感心できませんでした。一方の方は人物造形に多少疑問を感じましたし、もう一つはそんな技巧を使う意味があったのか疑問だと思ったのです。

No.2 8点 kanamori
(2012/09/09 20:49登録)
ピンカートン探偵社を辞めて、雑誌「ブラックマスク」の作家として糊口をしのいでいたダシール・ハメットが、元同僚殺しの犯人探しにサンフランシスコの街を駆け巡る異色のハードボイルド。

ハードボイルド小説の先駆者、サミュエル・ダシール・ハメットの若かりし頃のエピソードを織り交ぜながら、1928年のサンフランシスコの猥雑な夜の情景など、オマージュと時代の雰囲気が活き活きと描かれているのが◎。また、このまま終わるのか、と思われた終盤には”どんでん返し”的なミステリ趣向が凝らされている点もポイント高いです。
登場人物では、対照的と言える二人の若い女性が非常に印象に残る。アパートの隣の部屋にすむ娘グッディのハメットへの淡い恋愛感情が物語のいいアクセントになっているし、なによりも、娼家の女中である15歳の中国娘クリスタル・タムの意外な造形が見事です。

No.1 8点 mini
(2011/02/25 10:04登録)
本日発売の早川ミステリマガジン4月号の特集は”高橋葉介の夢幻世界/ジョー・ゴアズ追悼”
無理に4月号に間に合わせて追加しなくても、5月号でじっくり追悼特集組んでも良かったんじゃないかな

昨年はロバート・B・パーカー、今年はゴアズと正統ハードボイルドの巨匠が相次いで亡くなったが、その時点で私は両作家とも未読だったので、追悼を込めて初めて読んだのである
ファンには申し訳無いがロバート・B・パーカーに関してはそれまで読まなかったのを残念だとは全く思わなかったが、ゴアズは未読だったのを後悔した
これはもっと早く読んでおくべき作家だったな
考えて見るとジョー・ゴアズは単にハードボイルド派の一作家なんていう存在では無いわけで、アメリカを代表するミステリー作家の1人でありMWA会長職を務めた事もある

一般的にゴアズの代表作とも言われる「ハメット」は、研究者でもあり敬愛するハメットへのオマージュと言うだけでは充分な賛辞にならない傑作である
まずは何と言ってもハメットがサンフランシスコの街を闊歩していた禁酒法時代の雰囲気が見事に活写されているのが良い
ハメットが少々ヒーローとして格好良過ぎるのはあれだが、正統ハードボイルドとして書かれているので許そう
さらにはミステリー観点でも終盤に二重のサプライズを用意している
またあるトリックが使われているのだが、これがもし本格作品中で使用されたら読者から即刻見破られてしまうだろうが、ハードボイルド小説だという先入観が上手くカムフラージュしている
ちなみにハメットと協力して調査に当たる元ピンカートン探偵社の小太りの敏腕探偵ジミー・ライトは、コンチネンタル・オプのモデルとも言われる実在の人物である
実はオプって作者ハメットを投影してないんだよね、ゴアズ描くようにハメットはスリムクラブな体型で、オプの小太りな体型とは外見上は似ていない

池上彰、じゃねぇ~よ、池上冬樹が丁寧な解説を書いているしな、おぉ!これぞ池上解説

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