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ミステリの祭典

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シャーロック・ホームズの科学捜査を読む
E・J・ワグナー

作家 事典・ガイド
出版日2009年01月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 小原庄助
(2023/08/11 08:15登録)
各章が、ホームズ作品のエピソード、それと関わりを持つ特定の操作技術、そしてその技術を生み出す契機になった、あるいはそれが適用された有名な事件の物語という三つの部分から成り立っている。例えば「別人になり切る」では、ホームズが変装の名人だったことを想起したうえで、彼の捜査に影響を与えたフランス人で、やはり巧みに姿を変えたヴィドックの「回想録」に話が進み、さらに変装した犯人を見破る刑事の活躍が語られている。
また「有罪の確証」では、「赤毛組合」の依頼者が手首に中国特有の刺青をしているという記述から出発して、犯人を固定する技術の変遷をたどる。まず、当時の新しい技術である写真が活用され、次にパリ警視庁のベルティヨンが人体測定法を考察し、それが指紋による固定に取って代わられる顛末が語られる。犯罪の歴史は、それを捜査する科学知識の発展の歴史をも浮き彫りにしてくれるのだ。
その他に毒物学、血痕判定など、現代の犯罪捜査にもつながる興味深い話題が満載。犯罪実録ものを読む楽しさと、法医学を通じて社会の変化を知るという知的欲求が同時に満たされる。

No.1 6点 江守森江
(2010/12/06 19:11登録)
先月AXNミステリーではホームズの大特集で、既視聴作品が殆どながら短編一括放送&長編にオリジナル脚本まで大量に放送され、つい先日まで録画視聴に追い立てられた。
そんなシャーロック・ホームズ満腹状態ながら図書館で目に留まり手に取った。
ドイルがシャーロック・ホームズで描いた科学知識&捜査は現在では島荘が主張する「21世紀本格」に通じる。
その意味では「19世紀本格」の解説書でもある。
小説の場面を引用しながらの科学捜査解説は非常に興味深い。
一方で、傑作ミステリとして成立させるには「最先端の科学捜査」の扱いは非常に厄介で、それ故に叙述トリック、人物描写主体、前時代設定やC・C設定など科学捜査の介入を限定する逃げ道のミステリが発展したと思い至る。
余計なお世話だが、翻訳が下手クソで科学知識の解説がサラッとは理解出来ないのが本書最大の欠点と指摘しておく(もっとも科学の勉強ではないので雰囲気だけ楽しめばよいのかもしれない)

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