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ミステリの祭典

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推理日記1
佐野洋/原題『推理日記』

作家 評論・エッセイ
出版日1976年12月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 6点 kanamori
(2012/09/05 20:48登録)
「小説推理」誌上で長期連載されていた佐野洋氏のエッセイ風ミステリー時評「推理日記」が今年の7月号で遂に終了しました。スタートしたのが1973年らしいので40年近く続いたことになります。作者には”長い間お疲れ様でした”と言いたいですね。
ときには、揚げ足取りとか重箱の隅つつきなどと辛辣な評価をされることもあったエッセイですが、ミステリ読み初心者の時期に初めて手に取ったこともあり、個人的には結構影響を受けた気がします(といっても、パートⅢまでしか持っていませんが)。
本書の内容で印象に残っているのは、草野唯雄「もう一人の乗客」をテキストにした、物語進行上の”視点”に関する考え方ですね。叙述トリックがまだ一般化していなかった時代に、フェア・アンフェアと絡めて視点の問題を考察しているのが新鮮に感じました。
あと、目次を眺めていると、「アルキメデスは手を汚さない」「暗黒告知」などの乱歩賞作品ほか「動脈列島」「スカイジャック」など懐かしい作品が並んでいて、もう一冊の”フラッシュバック”として読み返すことも可能です。先日寸評した「カーラリー殺人事件」も本書を読んで再読したものです。

No.1 4点 Tetchy
(2010/11/15 21:20登録)
まず面白かったのは『推理日記』の名の下、当初は○月×日なる日付が付いていた事。しかしこの趣向もたった5回で終わっており、作者自身もあまり必要も無いので止めたと述べている。
そして本作は佐野洋氏の推理小説界に一迅の風を起こそうとかなり張り切っている様子が伺える。
というのも思いっきり各作家の力作、乱歩賞受賞作、好評な作品に噛み付いているからだ。終いには当時の人気ドラマ『太陽にほえろ!』までにも噛み付く始末。
これがなるほど、さすが佐野氏だと唸らせるものならばまだいいが、この頃は若気の至り(とは云ってももう四十路を迎えているのだろうが)が先行して、自分の云いたい事をいいながらも、論理が成立しにくくなると逃げる傾向が強く見られる。
例えば各作家の作品を褒めつつも、実は1つ―2,3の場合も多々あるが―気になるところがあると開陳し、それが何もそこまで・・・といったような具合である。
議論を吹っかけるのだが、なかなか抗議も来ず、他の作者の意見と佐野氏の考えが違う事もしばしばなのも興味深かった(まあ、そういうことを正直に書いている事もこの人らしいのだが)。

特に西村京太郎のベストセラー『消える巨人軍』に対する重箱の隅の突きようはちょっとベストセラーに対する嫉妬すらも伺えた(他人の作品を作品の質に関係のないところで粗探しをするのは自分を貶める事になると思うのだが)。

特に生島次郎氏が
「佐野洋は一見論理的に見えるんだけど、その論理が非常に独善的なんだよなぁ。特に私怨が混じると」
という風な事を云った件は一番傑作だった(よく書いたね、佐野さん)。

以上のように、独善的な我の強さが目立ったエッセイだった。
この連載が始まったのが1973年でこれだけ暴れまくって今までよく続いたなぁと、驚いた次第である。

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