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ミステリの祭典

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ベストセラー小説の書き方
ディーン・R・クーンツ

作家 評論・エッセイ
出版日1983年07月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点
(2012/09/24 11:13登録)
プロット、書き出し、タイトル、登場人物、背景描写、文体、それにちょっと裏話的な出版業界のことまでと、多岐に渡る説明が特徴的。おまけにそれぞれの章で多くの作品例の紹介がある。
ただ、書き方の具体的な練習方法の例示はほとんどなく、作品例の一部抽出とその評価にとどまっている。ファースト・シーンは著者のお好みの○○作家の××作品が良いなどと一部の文章を引用して評価するスタイルなので、読んでみようという気にはなっても、具体的な書き方練習にまでは踏み込んでいないので、ほんとうに作家を目指す人にとっては、本書を見て練習というわけにはいかないでしょう。書き方のポイント集という程度の位置付けなのでしょう。
もちろん、私のようなエンタテイメント・ファンにとって、読み方のポイントをつかめたのは良かったです。

文体の章には、細かな分析とともに、自ら作ったと思われるよい会話文例、悪い会話文例が載せてあった。これはなかなか面白い。
「会話を自立させよ」や「場面転換をうまくこなすコツ」は目からうろこという感じで、いままでなにげなく読んでいただけのところでも、今後の読み方が変わりそうな気がします。

作家という職業はみな、こんなに多くの作品を読んでいるのでしょうか。そこがいちばん驚いた点です。「読んで読んで読みまくれ」という、作家を志すなら最低限読むべきおすすめ作家の紹介の章もありました。

No.1 5点 Tetchy
(2010/11/06 19:54登録)
量産作家、ペーパーバック・ライターのクーンツが著した小説作法指南書。
常にその作品に接しているクーンツ読者としては書かれている内容はベストセラー小説の書き方というより、クーンツ小説の書き方といった方がかなり近い。クーンツの小説に見られる癖、プロットの作り方、小説パターンが余す所無く書かれている。つまりこれは題名を翻訳すれば「ベストセラー作家クーンツが教えるクーンツ小説の書き方」なのだ。云うなれば「クーンツ小説」=「ベストセラー小説」という訳。
内容的には一理あるのは認めるが、21世紀に突入した現在、物事の価値観はあまりに多様化し過ぎ、何が受けるかわからないものとなっている。本国アメリカではクーンツはまだベストセラー作家ではあるかもしれないが、現代の日本では既にクーンツの作品はベストセラー作品ではない。出せばそこそこ売れる小説である。
パターンは常に一定で、公式に代入する数字がそれぞれ違うだけである。そこそこ売れるのは一時の楽しみを常に約束されているので購入する読者と根っからのクーンツ好きのどちらかであろう。だから現在に即して読むとかなりの齟齬が見られるのだ。
また、クーンツが不得手な分野―本格ミステリ―に関する小説作法についてはほとんど参考にならない。いつの頃の本格ミステリの構造を語っているのか、目を疑う。こういう事を臆面も無く、本にして語るのがクーンツらしいと云えばクーンツらしい。
しかし、最後に掲げた必読本リストはなかなかの物。チャンドラー、ハメット、ケイン、ロスマクなどをちゃんと押さえてある辺りはかなり好感が持てたが、さらにセイヤーズまで読んでいたのには驚いた。やはりクーンツ、侮れない。

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