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ミステリの祭典

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フランキー・マシーンの冬

作家 ドン・ウィンズロウ
出版日2010年09月
平均点8.50点
書評数2人

No.2 7点 kanamori
(2010/12/11 16:06登録)
元マフィアの凄腕殺し屋、隠退した62歳の”釣り餌屋のフランク”を主人公にしたクライム・ストーリー。
何者かに命を狙われ逃亡を重ねながら、首謀者を特定するため40年以上に渡るマフィア時代の過去を回想するという構成を取っています。
殺戮と裏切りの物語でありながら、現在形を多用した独特の軽快なリズムの文章はノワール性を感じさせず、一気に最後まで読み通させる牽引力がありました。遊び心や娯楽性に溢れているという点では、前作「犬の力」より本書のほうがウィンズロウらしい作品だと思った。

No.1 10点 Tetchy
(2010/11/12 23:39登録)
とにかく主人公フランキー・マシーンことフランクがカッコいいのだ。どんなタフな奴が来ても動じない度胸と対処すべき術を心得ている。
よくよく考えるとウィンズロウ作品の主人公というのは自身の信ずる正義と矜持に従うタフな心を持った人物だったが、腕っぷしまでが強い人物はいなかった。つまり本書はようやくタフな心に加え、腕っぷしと殺人技術まで兼ね備えた無敵の男が主人公になった作品なのだ。
今まで伝説の殺し屋と噂されるキャラクターは色んな小説に出てきたが、その強さを知らしめるのは単に1,2つのエピソードだけでお茶を濁される作品がほとんどだった。しかしウィンズロウはその由縁をしっかりと描く。だから読者は彼がまごう事なき伝説の殺し屋であることを理解し、その伝説を保たれるよう応援してしまう。

そして抜群のストーリー・テラーであるウィンズロウ、過去のパートそして現代のパートが共に面白い。
このイタリア・マフィアの悪党どもがそれぞれの思惑を秘めて絡み合うジャムセッションは全くストーリーの先を読ませず、以前から私が云っているエルモア・レナードのスタイルを髣髴させる。特に本作は悪役の描き方といい、ストーリーの運び方といい、そして女性の描き方も付け加えて、さらにレナードの域に近づいているように感じた。元々“生きた”文章を書くことに長けたウィンズロウだったが、本書はさらに磨きがかかっている。ここぞというところにこれしかないという台詞や一文がびしっと決まっているのだ。

そしてこれこそ私が待ち望んだ結末といわんばかりの、静謐さと希望が入り混じった思わず笑みが零れる極上の終わり方だ。
これが現時点での邦訳された最新作というのだから、期待が募るというものだ。次作も一刻も早い訳出を期待しますよ、東江さん!

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