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ミステリの祭典

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カーデュラ探偵社
私立探偵カーデュラもの ほか

作家 ジャック・リッチー
出版日2010年09月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 E-BANKER
(2014/09/13 22:19登録)
超人的な力と鋭い頭脳で難事件を解決する黒服の私立探偵。ただし、営業時間は夜間のみ。その正体は・・・?
短編の名手リッチーが生んだユニークな名探偵カーデュラ・シリーズを全作集録した完全版。

①「キッド・カーデュラ」=私立探偵カーデュラが生まれる前の逸話的一編。とても人間技とは思えないカーデュラの“力”が披露される。
②「カーデュラ探偵社」=ここからがシリーズの本筋。変人たちの集まった屋敷で起こった殺人事件の調査が本編のテーマ。カーデュラのとぼけたキャラがいい味。
③「カーデュラ救助に行く」=同じ場所、同じ被害者で二晩続けて起こったひったくり事件。二晩とも現場に居合わせたカーデュラはいずれも犯人をその怪力で投げ飛ばす・・・。奇妙な偶然の裏側に実は・・・というのが本編のプロット。
④「カーデュラと盗難者」=お屋敷町で頻発する盗難事件を調査するため、あるパーティーへ潜入したカーデュラ。じき盗難者の正体には気付くのだが、探偵らしからぬ行動を取る。この辺りからカーデュラの正体があからさまになってくる・・・
⑤「カーデュラの逆襲」=ド○○○○の宿敵が登場!というわけで、なぜかカーデュラの仲間(?)も出てくる。ただし、最後の一節の意味がよく分からなかったのだが・・・?
⑥「カーデュラ野球場へ行く」=これが最もミステリーらしい作品。何しろダイニング・メッセージがテーマなのだから・・・。それ自体はまぁたいしたことはないのだが、球場の警備員とカーデュラのやり取りが面白い。
⑦「カーデュラと鍵のかかった部屋」=タイトルからすると密室トリックもののようだけど、それは主題ではない。絵画の盗難について依頼を持ち込まれたカーデュラガ二人の容疑者の自宅で捜査を進めるうちに、事件の裏の構図に気付く・・・というプロット。
⑧「カーデュラと昨日消えた男」=相棒が消えたという泥棒からの依頼を受けたカーデュラ。依頼そのものはすぐに解決に導くのだが、最後はなかなか洒落た行動に出る。

以上8編。で、ここからは河出文庫版ではノンシリーズの短編6編がオマケとして付いてくる。
(書評は割愛。カーデュラシリーズに比べると、どれも落ちるなという印象)

“短編の名手”という異名のとおり、軽妙なユーモア(死語)や語り口でグイグイ読ませる作品。
それ以上に、カーデュラのキャラ(または正体)が読者の笑い(ニヤリというやつ)を誘うところがニクイ。
訳のせいか若干読みにくい箇所があったのがマイナスだが、まずは水準級の作品とは言えそう。
(ベストは⑥かな。③~⑦はどれもまずまず)

No.2 6点 mini
(2013/07/29 09:54登録)
発売中の早川ミステリマガジン9月号の特集は、”魅惑の宝塚/作家特集ジャック・リッチー
噂ではリッチーの新短編集が11月頃に刊行予定という情報も

リッチーの2大シリーズ・キャラと言えば、とぼけた刑事ターンバックルと、夜間しか営業活動しない謎の私立探偵ド・・・じゃなくてカーデュラである
個人的にはターンバックルものの方が好きなんだけど、藤原編集室や出版社の方針で、ターンバックルものは短編集の中に2~3編挿入して面白いという考え方で特化した短編集は出さないという事らしい
一方のカーデュラものは短編総数が8作くらいで限られているのと、シリーズとして内容に比較的統一感が有る事から、1冊に纏め易いという判断が有った様だ
ただし統一感という意味ではシリーズ第1作「キッド・カーデュラ」だけは番外編で私立探偵に転身する前の話である
おそらくは単発として書かれたのだが、設定を探偵に変えればシリーズとして使えそうだと判断したのだろう
カーヂュラもの全編だけではちょっと分量的に足りないので、河出文庫版ではノンシリーズ短編を数編追加収録している
kanamoriさんの御書評に私も同感で、この巻でのノンシリーズ短編は作者比でちょっと質的に落ちる印象は有るなぁ
やはりこの巻のメインはカーデュラなので、ノンシリーズ短編はあくまでも”追加のおまけ”という扱いで、若干傑作とは言えないものを意図的に選んだのではないかなぁ

ところでAmazonでの「クライムマシン」でのレヴューの中に、ノンシリーズは良いけどシリーズものが余計みたいな意見が有って、さらに”カーデュラはまずまずだがターンバックルはあまり好きでない”という意見が有った
実は他のネット書評でもターンバックルものには好意的ではない意見が散見されるのが私としては残念、あのとぼけた味わいは作者の持ち味が出てると思うんだけどな

No.1 6点 kanamori
(2010/10/22 23:29登録)
欧州某国の伯爵だったという謎の私立探偵カーデュラが登場する8編ほか全13編収録の短編集。
やはり、私立探偵のカーデュラ(Cardula)シリーズが面白い。探偵活動は夜間のみ、日光が嫌いで十字架も苦手、昼間は棺桶で眠るという変わり者。作者は、最後まで正体を明かしてくれず非常に気になった(笑)。
当シリーズは既刊の単行本3冊に分散収録されていながら、今回文庫で1冊にまとめられた。河出書房さん、ほんとに商売上手。

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