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ミステリの祭典

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複雑系ミステリを読む
野崎六助

作家 評論・エッセイ
出版日1997年09月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 メルカトル
(2017/02/24 22:08登録)
冒頭で著者の野崎六助氏は複雑系ミステリをこう断定しています。
複雑に見えるほど単純
複雑に見えるけど単純
まるで禅問答のようですが。つまり複雑=単純ということのようです。全編を通しても頭の弱い私には理解しきれませんでしたが、とにかくそういう事のようです。
そして何を基準に選んだのか判然としませんが、複雑系として次のようなミステリを挙げて解説を加えています。
『占星術殺人事件』『すべてがFになる』『レベル7』『殺人鬼』『生者と死者』『哲学者の密室』『消失!』『密閉教室』『姑獲鳥の夏』『僕の殺人』『思いがけないアンコール』『人格転移の殺人』『リング』『暗色コメディ』『匣の中の失楽』などです。
どれも本質を衝いているようにも思えますが、なにしろ迂遠な言い回しや比喩的表現が多く、完全に納得できるというには程遠い結果になりました。
しかし、意外にも『占星術殺人事件』を褒め称えていたり、『姑獲鳥の夏』に関して京極堂、関口、榎木津、木場四兄弟説を唱えたり、『匣の中の失楽』と『殺人鬼』の相似性を指摘するなど、面白い論点もいくつかありました。
最終的には村上春樹の『アンダーグラウンド』を引き合いに出しながら、オウム真理教事件、M君事件、酒鬼薔薇聖斗事件などを熱く語っています、暴走しています。それと共にエヴァも・・・。
結局何が言いたいのか、迷子になりそうな私は、これらの事件はミステリに影響を受けたのではないという結論に達しました。
何だかんだで、複雑系だったのは本書の著者である野崎氏の頭の中だったようです。

No.1 5点 Tetchy
(2010/09/26 16:57登録)
今回の論説集は、当時巷間で話題に上った「複雑系」、特に図象学における「フラクタル」を素材にして古典的名作から昨今の京極夏彦、西澤保彦達の、所謂「ニューウェイヴ本格派」達のミステリの解体に勤しんでいる。
俎上に載せられた作品群が、前2作の論説集よりも肌に馴染んでいるせいもあり、またモチーフを「フラクタル」に絞っているため、理解はしやすかった。
だがやはり暴走しているという感は拭えなかった。極めの一歩手前の領域で衒学する事が、この作者に必要なのだ。

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