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ミステリの祭典

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雨の狩人
狩人シリーズ

作家 大沢在昌
出版日2014年07月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 E-BANKER
(2024/05/24 18:03登録)
不定期に発表されてる「・・・狩人」シリーズ。昔なにか読んだなあーと思って当サイトを探ってみると、「北の狩人」を読了していた。それ以来の本シリーズということになる。
単行本は2014年の発表。

~「誇りのために殺し殺され、誇りのために守り守られる。」 新宿のキャバクラで、不動産会社の社長が射殺された。捜査に当たった新宿署の刑事・佐江と警視庁捜査一課の谷神は、その事件の裏に日本最大の暴力団である高河連合の影があることを突き止める。高河連合最高幹部の延井は、全国の暴力団の存亡をも左右する一世一代の大勝負「Kプロジェクト」を立ち上げ、完全無欠の殺し屋を使い、邪魔者を排除しようとしていた。佐江、谷神と高河連合が、互いの矜持と誇りを賭けた戦争を始めようとするなか、プラムと名乗るひとりの少女が現れる。進むことも退くこともできない暗闇の中にいた佐江は、絶望を湛えたプラムの瞳に一縷の光を見出すが・・・~

単行本の最終ページを見てビックリ。本作って新聞連載だったんだね!
こんな(拳銃バンバン撃ち合うような激しい)小説・・・よく真面目な新聞社が連載してたねェ

で、本筋なのだが、うーん。これは大沢在昌エキス100%、渾身のハードボイルドだな。
「新宿鮫シリーズ」を長きに亘って読み継いでいる者としても、これをもし「新宿鮫シリーズです」と言われれば信じてしまいそうなプロット、物語だった。
主な舞台は新宿・歌舞伎町。主人公は一匹狼の新宿署刑事、相手は日本を代表する反社組織の若頭、そして現れる謎の殺し屋、そしてもうひとりのキーパーソンとなるタイ人の少女・・・
これだけ並べてみても、もはや「新宿鮫」と何ら変わるものではない。

別にこれはネガティブな評価なのではなくて、作者のエネルギーの籠った読者の心を揺さぶることのできる佳作ということである。
登場人物の一人一人にドラマがあり、背負っている過去や宿命がある。それを知る読者は、どうしても先読みしてしまう。「あーあ。これはこうなるんじゃないか?」「こういう悲しい結末を迎えるんじゃないか?」と。
そして、実際にそのとおりの展開、結末を迎えてしまう刹那・・・

いつも感じることだけど、作者の作品の登場人物は、常に「矜持」を持っている。それは刑事であれ、ヤクザであれ、殺し屋であれ・・・。みな、己の生き様を貫きとおして、作品のなかで己の命を全うしていく・・・
それがきっと、読者の心に響いていくのだろう。
本作のラスト。日比谷のビルでの壮絶な撃ち合い。そして、最後の最後に示される「親娘の絆」。ベタといえばベタかもしれないけど、所詮人の一生なんて、ベタな展開の連続なのだ。ド派手な銃撃戦を描きながら、作者が言いたかったのは、そういうベタな「親子愛」だったのかもしれない。

ということで作品世界にどっぷりのめり込んでしまった。ただ、書いているとおりベタなので、そういうのが鼻につく人は合わないかもしれません。

No.1 6点 びーじぇー
(2023/07/10 21:13登録)
地下格闘技が行われていた東京・新宿のキャバクラで不動産会社の社長が射殺されたのを発端として、血で血を洗う連続殺人が始まった。佐江とコンビを組む捜査一課の刑事、謎の「Kプロジェクト」の実現のために手段を選ばない暴力団幹部、その手先として動く凄腕の殺し屋、そして悲惨な過去を抱えてタイからやってきた少女。佐江を巻き込みながら彼らの思惑はぶつかり合い、ついに凄惨な全面戦争に突入する。
殺し屋に何度も命を狙われるなど、シリーズ中最大の危機が佐江を襲うハードな物語である。設定が派手なぶん、書きようによっては荒唐無稽になった可能性もあるこの作品に説得力を付与しているのが、「Kプロジェクト」に象徴される巨大暴力団の生き残り策だ。
暴対法と暴排条例によって、確かに旧来の暴力団犯罪は減少した。しかし、変わりに暴力団はカタギと見分けがつきにくい集団となり、法網を潜り抜ける新たなシノギを見つけるようになった。犯罪を取り締まるための法律が、却ってそこからすり抜ける新たな犯罪のかたちを生み出してしまうという、いたちごっこが現在の裏社会と司法の関係であるという著者の冷徹な認識が、佐江がギリギリの窮地に追い込まれるこの物語に、さらに苦い味わいを付与しているのだ。

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