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ミステリの祭典

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雨の狩人
狩人シリーズ

作家 大沢在昌
出版日2014年07月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 びーじぇー
(2023/07/10 21:13登録)
地下格闘技が行われていた東京・新宿のキャバクラで不動産会社の社長が射殺されたのを発端として、血で血を洗う連続殺人が始まった。佐江とコンビを組む捜査一課の刑事、謎の「Kプロジェクト」の実現のために手段を選ばない暴力団幹部、その手先として動く凄腕の殺し屋、そして悲惨な過去を抱えてタイからやってきた少女。佐江を巻き込みながら彼らの思惑はぶつかり合い、ついに凄惨な全面戦争に突入する。
殺し屋に何度も命を狙われるなど、シリーズ中最大の危機が佐江を襲うハードな物語である。設定が派手なぶん、書きようによっては荒唐無稽になった可能性もあるこの作品に説得力を付与しているのが、「Kプロジェクト」に象徴される巨大暴力団の生き残り策だ。
暴対法と暴排条例によって、確かに旧来の暴力団犯罪は減少した。しかし、変わりに暴力団はカタギと見分けがつきにくい集団となり、法網を潜り抜ける新たなシノギを見つけるようになった。犯罪を取り締まるための法律が、却ってそこからすり抜ける新たな犯罪のかたちを生み出してしまうという、いたちごっこが現在の裏社会と司法の関係であるという著者の冷徹な認識が、佐江がギリギリの窮地に追い込まれるこの物語に、さらに苦い味わいを付与しているのだ。

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