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ミステリの祭典

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謀殺の弾丸特急

作家 山田正紀
出版日1986年11月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 8点 虫暮部
(2023/02/03 11:57登録)
 超冒険(スーパーアドベンチャー)シリーズ第三弾、だそうな。第二弾『火神を盗め』は、キャラクターの身上や動機付けがアレコレうざったかった。対して本作は、否応無しに巻き込まれて “生き延びたい” だけの設定が、玄人相手の無茶な逃走劇に却って説得力を持たせている、と私は思う。相手を死なせても精神的な呵責がいつの間にか有耶無耶になっているあたりも、判る。
 “機関車 VS 攻撃ヘリ” では素人ならではのアイデアが炸裂して痛快無比。一方、ジャングルの中で一晩停車しても無事(なのに翌朝にはあっさり追い付かれる)、と言う流れには首を傾げた。

 尚、計画的殺人は起きていないわけで、タイトルは “無謀な自殺行為” の略、かな。

No.1 6点 人並由真
(2020/08/02 14:39登録)
(ネタバレなし)
 東南アジアの小国アンダカム。そこで日本の二流ジャーナリスト、大塚良介は軍事秘密基地らしき施設を撮影した。だが実はそこは独裁者の大統領が政敵などを拘禁する秘密の強制収容所で、大塚の動向を知った対ゲリラ部隊の冷酷な指揮官デイヴ・オル大佐は、日本人スパイと見なした相手の口封じに動き出す。旅行会社「ゴールデン・トラベル社」のパッケージ旅行者に紛れて国外に出るつもりだった大塚は軍の追求を察知すると、美人添乗員の吉岡晶子、そして老若男女6人の旅行仲間を強引に巻き込み、日本から何十年も前にこの国に輸出されていたいまだ現役の蒸気機関車C-57で隣国タイへの逃走を図るが。

 山田正紀1980年代冒険小説路線の一編。舞台がエキゾチシズム満点の異国で、大道具(陰の主役)となる蒸気機関車も初刊の時点ですでにレトロチックだったため、作品の大枠そのものは21世紀の今でも逆説的に? 古びた感じがしない。
 ただし作者がここで楽しませよう、と思ったのであろう、一般人旅行客チームによる軍の迎撃場面の一部などは、さすがにどっかで見たようなものも目立つ。これはこの作品の罪ではなく、35年も経ってから遅れて読んだこっちが悪いのだろうね。
 あと気になったのは、敵がテロリストや犯罪組織ではなく、とにもかくにもれっきとした公的機関なんだから、無線や何かを用いて軌道のはっきりしている蒸気機関車の先回りをすればいいような気もするのだが、ほとんどそういう種類の戦略が描かれていない。極端な話、一時間後にそこを通るであろう線路の上に廃棄してもよい大型廃車とか置けば、それで(主人公たちには悪い意味で)「勝負あった」だよね? 
 あと、婆ちゃん・加賀佳美さんの後半の活躍はともかく、彼女の病院院長の母親という設定が死に文芸だったのもちょっと残念。実は、玉の輿に乗った元看護婦とかなんとかで、久しぶりに救護の腕をふるうとか、そういうのを考えていたが、この辺は仕込みだけしておいて、ネタを使う間がなかったのか?(連載作品を加筆・改訂したとのことだから、いくらでもやりようはあったとは思うが。)

 たしかに本作は、先行する『火神を盗め』の系列ではありますが、満足度も感興のほども、あの大大・傑作の向こうには遠く及びません。まあ当初から、あそこまでのものがまたもう一度読めるなどと夢のようなことは毫も期待してはいませんでしたが。
 まあ和製『高い砦』プラスロードムービー的な冒険小説としては、そこそこの佳作。悪くないけれどね。ヒロインの晶子は、ちゃんと見せ場はこなしてくれたし。

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