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ミステリの祭典

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メグレの初捜査
メグレ警視

作家 ジョルジュ・シムノン
出版日1977年05月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 クリスティ再読
(2021/11/11 22:57登録)
「メグレの回想録」はメグレの結婚で終わるので、本作が扱うのは新婚のメグレが所轄署の署長秘書として関わった事件から、特捜部の刑事に任命されるまでの話。けっしてメグレがただ若くて「刑事くん」な話じゃなくて、シリーズ中でも屈指の変化球だと思う。
要するに「貫禄のないメグレ」なのである。だから、上司の署長やら刑事たちやら、さては事件の関係者に至るまで、「坊や」扱いでナメられること....「コイツ、デカだ!」と気づかれたギャングに、あわや攫われて殺されかける危機一髪なシーンまであり。後年のメグレじゃ、絶対お目にかかれない展開の連続で、ヘンに面白い。
で、こういう苦い思いをして、屈辱も胸に秘めながら、

もしぼくが治安警察局に入るようなことがあったら、ぼくは誓って、所轄署の憐れな連中に対して軽蔑のそぶりなぞ絶対見せないぞ。

と心に誓ったりする。確かに後年のロニョン刑事に対する態度など、メグレという男の人格の一貫性をうまく描写している。「運命の修理人」という比喩が登場するのが、この作品というのもシリーズ構成としてウマくできてるな~と思わせる。

あと没落した伯爵家に生れながらヤクザになった男のイキな生きざまとか、その相棒が憎めないあたりとか、メグレが付き合うことになる暗黒街の住人達のキャラ描写もみょーにカッコいい。
決して「メグレの回想録」みたいな愛読者サービスみたいな内容ではなくて、変化球ながら独立した価値がある。

No.1 6点
(2010/07/30 21:15登録)
シリーズ開始から20年近く経ってやっと語られる、メグレが警察に入ってまだ4年目という若い頃の話です。
メグレについての批評で言われる「運命の修繕人」という言葉は、本作の中で出てきます。警察に入る前、医者の勉強をしていたメグレが目指していたのは、結局「運命の修繕人」だったのだという説明がされているのです。また、ジュール・アメデ・フランソワ・メグレという彼のフル・ネームが明かされるのも本作です。というより、本作を書いてる途中で2つのミドル・ネームも入れることにしたんだろ、と思えます。
1910年代の事件。警視になってからのメグレものに登場する新米刑事たちの視点から書かれたような感じもする本作。上司に辞表を叩きつけてやろうと思いつめる若いメグレに同情を感じたりもして、いつもとは違う雰囲気が楽しめました。

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