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ミステリの祭典

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どんがらがん
奇想コレクション

作家 アヴラム・デイヴィッドスン
出版日2005年10月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 5点 ことは
(2023/05/13 17:34登録)
解説にあるとおり「変な小説」だった。
面白さのポイントがよくわからない話が多かった。賞をとっている作品が4つ、「EQMM第1席:物は証言できない」、「ヒューゴー賞:さもなくば海は牡蠣でいっぱいに」、「MWA賞:ラホール駐屯地での出来事」、「世界幻想文学大賞:ナポリ」とあるので、世評も高いのだが、どこを評価されたのだろう。とくに「ナポリ」はわからなかった。これ、幻想文学か?
一番わかったのは「さあ、みんなで眠ろう」。これは切ないSFだった。
全体的に玄人好みなのかな? わからないが、気を引かれるところはある。いつか再読してみたら、ひょっとしたら楽しめるかもしれない。

No.2 7点 tider-tiger
(2017/12/03 16:12登録)
河出書房より奇想コレクションの一冊として出版されたアヴラム・デイヴィッドスンの短編集。ファンを自認する故殊能将之氏が原文で100編以上を読んだうえで選出したそうですが、そこまでの努力をして、ファンサイト(現在は消滅)まで立ち上げたわりに殊能氏の解説は淡々としており、好き好き大好き超愛してる感は希薄だった。一言でいうと収録作は『変な小説』ですと。変な中に語り口で読ませるタイプ、奇想で読ませるタイプ、感情を揺さぶるタイプなどなどあって、ここに異国趣味や衒学趣味が入り混じる。
デイヴィッドスンは雑誌の編集長時代に星新一の『ボッコちゃん』をアメリカに紹介した人でもあるとのこと。

個人的にはそれほど変だとも難解だとも思わなかった。わかりにくい作品は半分もない。わかりにくいと思われる作品もよく読めばわかるように書かれている。理解を拒んでいる(ように思える)作品は『尾をつながれた王族』『ナポリ』あたりか。掲載順が良かったのかもしれない。前半に判りやすいものが並んでいて、四作目あたりから徐々に奇想系、解読不能系が姿を現してくる。最初に『ゴーレム』を読まされるのと『ナポリ』を読まされるのとでは印象がかなり変わるだろう。

『さあ、みんなで眠ろう』
技巧的には特に目を惹く点はない。ただただ感情を揺さぶる。大好きだ。
『ラホール駐屯地での出来事』
解説を先に読んだ方がいいかもしれない作品。キプリングの詩を下敷きにしており、その詩を知らないと意味がよくわからないという困った一品。
『クィーン・エステル、おうちはどこさ?』
少数意見かもしれないが、これが一番好き。 
『そして赤い薔薇一輪を忘れずに』
本短編集でもっとも秀れた作品ではないかもしれないが、もっとも忘れ難い作品。デイヴィッドスンの作家性が凝縮されていると思う。最後の一行を読んだ瞬間、タイトルにニヤリ。
『ナポリ』
正直なところ、まったくわからなかった作品。
殊能氏の解釈がなかなか面白い。映画的な作品であり、ラスト一行はカメラに向けた指示のようなもので、この後カメラがナポリの街並みを映し出すことを想定しているのではないかと。なるほど、言われてみれば。
『すべての根っこに宿る力』
無茶な動機を設定で納得させるミステリ。うまいなあ。
『どんがらがん』
滅茶苦茶面白い。

収録作 
ゴーレム 
物は証言できない 
さあ、みんなで眠ろう 
さもなくば海は牡蠣でいっぱいに 
ラホール駐屯地での出来事 
クィーン・エステル、おうちはどこさ? 
尾をつながれた王族 
サシェヴラル 
眺めのいい静かな部屋 
グーバーども 
パシャルーニー大尉 
そして赤い薔薇一輪を忘れずに 
ナポリ 
すべての根っこに宿る力 
ナイルの水源 
どんがらがん

殊能さんには海外作品をもっと紹介して欲しかった……。
もちろん作品ももっと読みたかった。
夭折が本当に惜しまれます。

No.1 6点 mini
(2010/07/30 09:31登録)
異色短篇作家アヴラム・デイヴィッドスンは、本格中心な読者だとクイーン「第八の日」の代作者ではないかと噂になっている事で知られているだろう
「盤面の敵」のシオドア・スタージョンといい、なぜかクイーンの代作者と言われるのが異色短篇作家なのが不思議である

河出書房の奇想コレクションはその叢書名からも分かるようにややSF寄りと思われる
例えばジョン・スラデックは本来はSF作家ではあるが、この叢書に入っているのはまさにSF短編集らしいようだ
しかしスタージョンの『不思議のひと触れ』もそうだがこのデイヴィッドスン『どんがらがん』もジャンルを超越した異色短編集で、ミステリーとしても読める
早川の異色作家短篇集全集にもしも第二期があったとしたら、この2人はきっと入るのではと思ったのが、デイヴィッド・イーリイとアヴラム・デイヴィッドスンなのである
異色短篇作家としてのデイヴィッドスンは中上級読者向きであって、比較的とっつき易いロバート・ブロックやリチャード・マシスンのような異色短篇入門向きではない
収録の「ナイルの水源」などアイデアも卓越しているのだが、アイデア優先な作家でしかも難しい
内容だけでなく方言を多用した文章も難解で、この分野に慣れていないとデイヴィッドスンは難しいと思う
解説はこの作家を敬愛する殊能将之

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